皮膚科領域より1990年10月から1993年9月の期間,黄色ブドウ球菌を分離し,各種薬剤の感受性,コアグラーゼ型,β-ラクタマーゼ測定,およびPCR法によるmecA遺伝子の検出を行った.皮膚細菌感染症病巣から分離した黄色ブドウ球菌149株のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の頻度は40.3%であった.各抗菌薬に対する感受性は,MIC50でみるとimipenem(IPM),rifampicin(REP),tosufloxacin(TFLX),MIC90ではvancomycin(VCM),IPM,fusidic acid(FA)が良好であった.コアグラーゼ型別試験では全体としてⅦ型が最も多く,MRSAに関してはⅣ型,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)ではⅦ型が多い点は以前と同様であったがⅡ型のMRSAが急増しⅣ型より多くなっていた.疾患別では深在性膿皮症(dv,癰など)でⅣ型,伝染性膿痂疹でⅠ,Ⅴ型が多い傾向に変りなかった.β-ラクタマーゼ産生能は陽性72.5%であり,MRSA(65.0%)はMSSA(77.5%)より陽性株が少なかった.60株について測定したmecA遺伝子はMPIPCのMICが8μg/ml以上の株は全て陽性であり,2μg/ml以下は全て陰性であった.一方,アトピー性皮膚炎の湿潤表面から分離した黄色ブドウ球菌148株のMRSAの頻度は31.1%で皮膚感染病巣から分離した黄色ブドウ球菌より少なかったもののかなりの高率であった.コアグラーゼ型別試験ではⅠ,Ⅲ,Ⅵ型が多く,Ⅳ型が少なかった.β-ラクタマーゼ産生能は陽性菌が87.8%であり,感染病巣由来株より陽性率は高かった.
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