日本皮膚科学会雑誌
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102 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 小松崎 久乃
    1992 年 102 巻 3 号 p. 335-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    Candida albicans (C. albicans)はペプトンとグルコースを含むSabouraud液体培地で培養するとタンパク質を分解するプロテアーゼを産生しないが,ペプトンの代わりにケラチン,牛血清アルブミンなどのタンパク質を添加した培養系ではそれを産生することが知られている.C. albicansの産生するこのプロテアーゼの生物学的性状については多くの報告があるが,本菌がリパーゼをも,状況によっては産生するのではないかと想定して,各種培養系におけるその産生誘導を試みた.その結果,C. albicansはTween80を含む液体培地で培養すると,リパーゼ(脂質分解酵素)の活性が検出された.そこで,このリパーゼ産生の誘導条件と本酵素に関する若干の生化学的性状について検索し,その生物学的意義について考察した,即ち,C. albicansのリパーゼ活性は,比較検討した各種液体培地中では,①yeast nitrogen base(YNB)に長鎖脂肪酸エステルであるTween80を添加した液体培地において検出・産生され,②培養上清中に放出される菌体外型のリパーゼを主とするものと考えられ,③菌数の増加とこの酵素活性はよく相関し,また,④本酵素活性の産生は添加培養したTween80の濃度依存性であった.一方,⑤炭素源を十分含むSabouraud培地やyeast carbon base (YCB)培地では,たとえTween80を添加してもリパーゼ活性は認められなかった.また,⑥YNB培地にTween20やTriton X-100を添加した培地からもリパーゼ活性が認められなかった.以上よりC. albicansにおけるリパーゼの誘導には炭素源が極端に制限された培地に,ある種の長鎖脂肪酸を含む脂質が共存するが如き,特定の条件が必要であることが示唆された.更に,⑦本酵素は膵リパーゼと同じく胆汁酸の存在下で活性が増加したが,⑧トリプシン処理による活性の増加は認められず,⑨その至適pHは5.5であった,また,本酵素の活性は,⑩各種タンパク分解酵素阻害剤や2価金属イオンの影響を受けず,エステラーゼ阻害剤も活性を阻害しなかった.正常ヒト皮膚角層表面にはトリグリセリドをはじめとする種々の脂質か存在し,弱酸性を示すこと,などより,C. albicansはその置かれた条件,状況に応じてその産生するリパーゼを利用しつつ生体の脂質を分解し,菌の増殖を果たしている可能性が考えられた.以上,C. albicansの産生するリパーゼは,従来病原性因子と考えられているプロテアーゼと同様に重要な病原性因子となっている可能性が示唆された.
  • 相馬 良直, 竹原 和彦, 石橋 康正
    1992 年 102 巻 3 号 p. 343-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    全身性強皮症患者36例及び年齢を一致させた健常人21例について,血漿PDGF (platelet-derived growth factor)濃度をラジオイムノアッセイにより測定した.強皮症群では240±138pg/ml,健常群では173±55pg/mlで,強皮症群で有意の高値を示した.250pg/ml以上の高値を示したのは強皮症群で14例(38.9%)であったのに対し,健常群では1例(4.8%)のみであった.抗核抗体別にみてみると,抗トポイソメラーゼI(Topo-I)抗体陽性患者の血漿PDGF濃度は健常群に比し有意な高値を示したが,抗Topo-I抗体を持たない患者では健常群と差がなかった.これらの結果から,PDGFが全身性強皮症のpathogenesisにおいて重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
  • 山﨑 直也, 佐々木 英也, 早坂 健一, 石原 和之, 関根 暉彬
    1992 年 102 巻 3 号 p. 349-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    Tumor-infiltrating lymphocytes,またはperipheral blood lymphocytes をrecombinant interleukin-2と固層化CD3抗体の存在下に短期間に培養して得られたリンパ球を,Immobilized anti-CD3 antibodyactivated T lymphocytesと名付け,集学的治療の一つとしてstage Ⅳの悪性黒色腫7例に投与し,その臨床効果を検討した.このうち, natural interferon-β局所投与と併用した1例に,complete response, cisplatin+vindesine+dacarbazineのcombinationによる化学療法と併用した1例に,partial responseが得られた.またCD3-ATの投与を原因とする明らかな副作用は認められなかった.
  • 山田 裕道, 高森 建二, 小川 秀興
    1992 年 102 巻 3 号 p. 363-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    本邦皮膚科領域における血漿交換(PE)療法の実施状況を知るためにアンケート調査を行った.調査対象は全国の,大学病院皮膚科103施設と一般病院皮膚科(皮膚科研修認定病院)203施設の計306施設とした.回答率は89.2%(大学病院で100%,一般病院で83.7%)であった.PE療法施行率は大学病院で55施設,53.4%,一般病院で18施設,10.6%であった.PE療法施行症例は全体で23疾患164症例であった.疾患の内訳は天疱瘡57例,類天疱瘡37例と自己免疫性水疱症が最も多く57%を占め,次いで尋常性乾癬,SLEの順であった.またPE療法の有効率は,自己免疫性水疱症では約80%を示し,対象とした症例の多くが従来の治療法に抵抗性を示すもの,ステロイド剤の副作用を示すものである点を勘案すると極めて良好な成績と考えられた.一方,副作用出現率は13.4%であり,このうち40%が肝障害であった.これは遠心分離法によるPE療法を行った際に用いたヒト新鮮血漿(FFP)に由来するものであり,現在PE療法の主流である二重濾過血漿分離法では肝障害の出現が認められていない.このことから,今後はこれら副作用の大部分は回避可能と思われた.PE療法の難治性疾患に対する有効性を反映して,皮膚科領域でのPE療法の健康保険の適応が大多数の施設から要望された.
  • 種井 良二, 衛藤 光, 西山 茂夫
    1992 年 102 巻 3 号 p. 369-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    尋常性乾癬におけるアンスラリン療法の治療効果をゲッケルマン療法,PUVA療法,UVB療法との比較から検討した.①単独療法有効例,②併用治療施行例の治療効果の比較から,アンスラリン療法の,1)治療有効性はゲッケルマン療法,PUVA療法と同等以上で,UVB療法に勝り,2)治療効果はPUVA療法より短期間で得られ,3)治療効果の持続期間はPUVA療法やUVB療法に劣らず,ゲッケルマン療法に勝る傾向がみられた.以上の検討結果より,アンスラリン療法は乾癬治療の一翼を担うに十分な治療効果を有し,本邦でもさらに試みられるべき治療法であると考えられた.
  • 野口 俊彦, 向井 秀樹, 西山 茂夫, 西岡 清
    1992 年 102 巻 3 号 p. 377-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    乳幼児のアトピー性皮膚炎(AD)と乳児脂漏性皮膚炎(SD)の異動を明らかにするため,5年前にADと診断した症例(150例)及び,2~5年前にSDと診断した症例(70例)の追跡調査を行った.調査時症状が軽快していない群はSDでは57.1%,ADでは62.6%であった.これら非軽快群の特徴を見ると,①初診時罹患部位が両者とも体幹,四肢,肘窩・膝膕であり,②苔癬化・乾燥肌を皮膚症状として示すAD患者で,③家族歴・既往歴ではAD・SD群共アトピー歴を有するものが多かった.SD群での特徴的な皮膚症状はみられなかった.以上より,SD群の非軽快群は実はADと同様の症例であったと思われる.また,1年以内に軽快したSDとADについて比較すると,罹患部位,皮膚症状,既往歴,家族歴に於て軽快率が異なり,ADとSDは,独立した疾患概念と考えた.
  • 1992 年 102 巻 3 号 p. 385-
    発行日: 1992年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
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