金属アレルギー患者は,ピアスなどのアクセサリーの流行の影響もあり近年増加している.金属が触れている部分の皮膚にかぶれやかゆみなどが起こるアレルギー性接触皮膚炎の場合は,金属アレルギーとの診断が容易であるが,掌蹠膿疱症や異汗性湿疹,全身性接触皮膚炎・接触皮膚炎症候群など難治性の皮膚症状については,原因不明の難治性の皮膚疾患と診断されていることもある.金属アレルギーの発症因子として,口腔内に存在する歯科金属材料が関わることも多い.口腔内の金属が原因の場合,金属イオンが溶出し続けるため症状が持続する.投薬によって皮膚症状が改善しにくい患者で,金属でかぶれた既往のあるものについては金属アレルギーを疑ってみることが重要である.
金属アレルギーには皮膚に直接接触して起こす金属接触アレルギーと,食品や歯科金属に含まれた微量金属が体内に吸収されて発症する全身型金属アレルギーとがある.全身型金属アレルギーの最も多い病型である汗疱状湿疹は,ニッケル,コバルト,クロムのパッチテストが陽性を示すことが多く,チョコレートや豆などの金属の多い食品を制限することにより軽快することがある.ただしこれらの金属は人体にとって必須金属でもあるため,厳格すぎる除去食は避けるべきである.
産科医院を感染源とするCA-MRSA(市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による集団感染事例を報告する.癤や癰などのMRSA皮膚感染症で当院を受診した患者が2001年に急増した.A産科医院の出産者関連症例が多いため,分離菌株の細菌学的検査および同産科医院の職員と入院・外来患者の保菌調査の結果,PVロイコシジン陽性CA-MRSAによる集団感染事例であることが判明した.本邦ではCA-MRSA集団感染事例は少ないが,このような事例があることを念頭において十分な院内感染対策を施行する必要がある.