日本皮膚科学会雑誌
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116 巻, 14 号
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皮膚科セミナリウム 第21回 人・動物・虫・原虫
  • 高垣 謙二
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第21回 人・動物・虫・原虫
    2006 年 116 巻 14 号 p. 2247-2253
    発行日: 2006/12/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)には,リケッチア感染症としてつつが虫病,日本紅斑熱,発しんチフスが四類感染症全数把握の疾患として分類されている.つつが虫病と日本紅斑熱はダニに吸着された後,一定の潜伏期を経て,突然の発熱,悪寒戦慄,頭痛などで発症する.発熱後数日して無症候性紅斑を生じるが,つつが虫病の発疹では躯幹に多い傾向があり,日本紅斑熱では四肢末梢に多く出血斑を伴いやすい.発しんチフスはわが国では50年近く報告はないが,コロモジラミの糞を介して伝播する.一定の潜伏期の後,悪寒戦慄をともなう発熱,頭痛,筋肉痛で発症する.発熱後1週間以内に出現する紅斑は躯幹を中心に拡大するが,掌蹠,顔面にはまれである.発疹は当初紅斑であるが,出血斑となる.いずれの疾患も確定診断が迅速・手軽にできるとはいえない状況であるため,臨床医は,発疹を有する熱性疾患の一つにリケッチア感染症もあるということを念頭において診療をすることが大切である.
  • 和田 康夫
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第21回 人・動物・虫・原虫
    2006 年 116 巻 14 号 p. 2255-2258
    発行日: 2006/12/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    ヒトに寄生するダニの代表は,マダニと疥癬である.両者は同じダニ類とはいえ,生態は異なり寄生様式も違う.同一のマダニであっても,発育期が異なれば臨床像も異なる.ここでは,マダニ,疥癬のライフスタイルを述べながら,これらのダニ疾患がどのような臨床像を呈するのか,診断や治療をどのようにすすめていけばよいのか述べる.
  • 夏秋 優
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第21回 人・動物・虫・原虫
    2006 年 116 巻 14 号 p. 2259-2264
    発行日: 2006/12/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    皮膚疾患を引き起こす有害動物はきわめて多い.これらの有害動物がヒトの皮膚に対して,刺咬,吸血,接触によって有毒成分や唾液腺成分を侵入させることで,刺激性,あるいはアレルギー性の非感染性炎症反応を惹起する.また,寄生虫の侵入,あるいは有害動物の媒介によって感染した病原微生物に対して,感染性の炎症反応を生じる.これらの疾患に対して適切な診断を下すには,個々の有害動物の分布や生息環境,生態などを熟知しておく必要がある.本稿では有害動物による皮膚病の概略を把握するため,皮膚疾患を引き起こす主な有害動物とその病害について簡潔に解説した.
原著
  • 豊田 美都, 蔵 紀子, 今福 信一, 師井 洋一, 占部 和敬, 古江 増隆, 古賀 哲也
    原稿種別: 原著
    2006 年 116 巻 14 号 p. 2265-2272
    発行日: 2006/12/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    54歳の男性.鹿児島県出身.6カ月前から体幹,四肢にそう痒を伴う環状に配列する紅色丘疹が出現,拡大してきた.病理組織学的に真皮内に膠原線維の変性が見られ,その周囲に類上皮細胞,組織球,リンパ球,多核巨細胞が浸潤し,柵状肉芽腫の像を呈していた.臨床像とあわせ汎発性環状肉芽腫と診断,皮疹は環状型の定型疹であった.75gOGTT試験で2型糖尿病の診断.抗Human T-lymphotropic virus(HTLV)-1抗体が陽性,末梢血中に成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)様細胞が出現し,ATLくすぶり型と診断した.我々が調べ得た限り本邦で汎発性環状肉芽腫の報告例は自験例を含め246例あり,その内ATLを合併した例は自験例のみであった.生検組織のproviral DNA(Southern blot法)は陰性であり,自験例においてATLの肉芽腫形成への関与は少ないと考えた.Narrow-band UVB照射,エトレチナート内服,ジフルプレドナート軟膏の外用で皮疹は軽快している.本邦で報告された246例の合併症,治療法および効果について集計した.
  • 斎藤 佑希, 長谷川 稔, 村田 朋子, 中條 園子, 石井 貴之, 松下 貴史, 藤本 晃英, 折戸 秀光, 高倉 大匡, 竹原 和彦
    原稿種別: 原著
    2006 年 116 巻 14 号 p. 2273-2278
    発行日: 2006/12/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    50歳男性.初診4カ月前より右頬部の皮下結節を自覚.氷見市民病院でのMRIの所見にて悪性腫瘍を否定できなかったため,positron emission tomography(以下PET)を施行された.PETにて右頬部および四肢軟部組織に多発する高集積像を認め,その分布からサルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患を疑われて金沢大学医学部附属病院に紹介された.右頬部皮下結節の生検病理組織では,類上皮細胞からなる非乾酪性肉芽腫が認められた.他にサルコイドーシスの症状や臓器病変はみられなかったが,右腓腹筋の無作為生検を施行したところ,右頬部と同様の類上皮細胞性肉芽腫が認められたため筋サルコイドーシスと診断した.PETにて四肢の軟部組織に認められた高集積は肉芽腫性炎症を早期に捉えたものであり,PETがサルコイドーシス診断の一助となる可能性があるものと思われた.
  • 新石 健二, 越後 岳士, 折戸 秀光, 麦井 直樹, 藤本 晃英, 長谷川 稔, 藤本 学, 竹原 和彦
    原稿種別: 原著
    2006 年 116 巻 14 号 p. 2279-2283
    発行日: 2006/12/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    50歳,女性.39歳時に,Raynaud現象,皮膚硬化,肺線維症が出現.近医にて抗topoisomerase I抗体,抗U1-RNP抗体が陽性の全身性強皮症と診断され,48歳時当科初診.肺は,すでに蜂窩肺の状態にあり,徐々に右室圧が上昇したため,ベラプロストナトリウムなどの内服や酸素吸入を行ったが,労作時の息切れが増強傾向にあった.今回入院時,ドップラー心エコーによる推定収縮期右室圧が54 mmHg,平均肺動脈圧は26 mmHgに上昇し,6分間歩行は342 mであった.肺線維症に伴う肺高血圧症に対して,ボセンタン125 mg/日の内服を開始したところ,労作時の息切れが軽減し,心エコーによる推定収縮期推定右室圧が30 mmHg,推定平均肺動脈圧は24 mmHgと著明に低下した.6分間歩行も389 mと延長したことから,ボセンタンが著効したものと考えた.
  • 山中 滋木, 杉原 昭, 堀尾 武
    原稿種別: 原著
    2006 年 116 巻 14 号 p. 2285-2290
    発行日: 2006/12/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    82歳,男性.膀胱腫瘍に対し膀胱全摘除術及び尿路変向術を施行後,MRSA敗血症を合併したため,塩酸バンコマイシンの点滴投与を開始した.投与14日目に体幹を中心にびまん性紅斑が出現し,同16日目には紅斑上に多発性緊満性水疱も認めた.病理組織学的には,表皮下水疱で真皮乳頭に好中球及び好酸球浸潤を認め,蛍光抗体直接法にて基底膜領域にIgA線状沈着を認めたため,線状IgA水疱性皮膚症と診断した.塩酸バンコマイシンが原因薬剤として疑われたため,これを中止し,抗アレルギー剤内服及びステロイド外用を開始したところ,約2週間で軽快した.これらの経過から塩酸バンコマイシン誘発性線状IgA水疱性皮膚症と考えられた.
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