4症例の典型的頑癬病巣より1個の丘疹と3個の膿疱性丘疹とを採取し,表皮の微細構造を観察して次の所見を得た.角化細胞の変化は特異性のない退行性変化であり,その程度には細胞の一部に起る微小変化から細胞全体の崩壊に至る迄の差異がみられ,また表皮各層によっても変化に強弱の差があり,特に下層及び中層の有棘細胞に最も強い変化が認められた.細胞内浮腫は二型あって,一つは細胞質基質の瀰漫性電子密度低下であり,他の型は多数の空胞と小胞の出現である.細胞間浮腫は細胞内浮腫と同時にみられた.表皮内遊走細胞は主に好中球で,これが崩壊した角化細胞の破片を活発に貪食する像が観察された.表皮上層の有棘細胞に特異変化としてCytolysomeがみられ,また多数のMembrane Coating Granule(MCG)が認められた.角質層にケラチンパターンを示す角質細胞とそれを示さない異常角質細胞の両者が認められた.後者の直下の顆粒細胞には少数の小型で円形のケラトヒアリン顆粒が存在した.白癬菌は菌糸と分節胞子が正常角質の部位に存在したが,異常角質や顆粒細胞層以下には発見されなかった.寄生状態の菌糸と分節胞子の微細構造を明らかにした.メラノサイトには周囲の角化細胞と同様な退行性変化がみられ,メラニン生成障害とメラノソーム伝達障害が推測された.ランゲルハンス細胞にも退行性変化がみられたが,貪食作用は認められなかった.
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