正常およびn-Hexadecane(n-HD)により誘導された増殖亢進状態のモルモット表皮に対する粗製コールタール+UVAおよび粗製コールタール単独処置の作用を細胞動態学的方法により検討した.正常表皮では,タール単独1回塗布した場合標識指数は4時間後まで低下し,核分裂指数は12時間後まで減少していたが,24時間後にはS分画,標識指数,G2+M分画および核分裂指数はいずれも増加した.タール1回塗布+UVA1J/cm2 1回照射した場合には,タール単独処置の場合と比べて,標識指数の低下の継続時間は同じであったがその程度はやや高度であり,核分裂指数の低下の継続時間はより長く,その程度はやや高度であった.増殖亢進状態の表皮では,タール2回塗布した場合標識指数は12時間後まで低下し,その後増加した.核分裂指数は24時間後まで減少し,その後対照レベルに戻った.なお,S分画およびG2+M分画の値は観察期間中種々の程度の増加を示した.タール2回塗布+UVA1J/cm2 1回照射では,タール単独処置の場合と比べて,標識指数減少の継続時間は同様であったがその程度はより高度であり,核分裂指数減少の継続時間に差異はなかったがその程度はより高度であった.タール2回塗布+UVA4J/cm2 1回照射では,タール2回塗布+UVA1J/cm2 1回照射の場合と比べて,標識指数減少の程度はより高度となり,核分裂指数減少の継続時間はより長くなった.このように,本実験ではタール自体が表皮DNA合成および核分裂に抑制的に作用すること,それらの抑制作用はタール+UVAにより増強されること,またそのような抑制作用の増強はタール中の光毒性物質の光毒性反応によることが明らかにされた.以上の成績から,タール+UVAの抗乾癬効果はその細胞増植抑制作用,特に比較的長時間継続する核分裂抑制作用によるものと考えた.
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