免疫チェックポイント阻害薬および分子標的薬などの新規薬物療法の登場により,従来よりも進行期メラノーマ患者への治療効果は改善した.一方で,新規薬物療法の選択は複数あり,患者の生存期間を可能な限り延長できるよう,その選択や使用順について,より厳密な標準化が求められるようになった.この標準化こそがガイドラインの主たる役目であるが,クリニカルクエスチョンに対する推奨度はあくまでエビデンスありきであり,「エビデンスなきクリニカルクエスチョンに推奨なし」である.本邦の患者を対象とした研究と良きシステムで作成される充実した本邦ガイドラインは両輪をなすものである.
がん細胞の生存に重要な特定の遺伝子異常を標的とした治療薬を用いて個別化治療を行うことを,「がんゲノム医療」と呼ぶ.悪性黒色腫においては,BRAF,RASなどの治療標的となる遺伝子異常が見つかる確率が高く,組織分類も遺伝子異常と関連した分類となり,遺伝子パネル検査を用いた個別化治療が行われている.しかし,検査受検率は全てのがん患者の1~2%に留まり,治療到達率も10~15%と報告されており,検査の普及と同時に,適応外使用に関する治療体制の整備が必要不可欠である.
90歳女性.約10年前に両側難治性中耳炎を発症.MPO-ANCA陽性からANCA関連中耳炎と診断され副腎皮質ステロイド薬で加療された.当科初診の3カ月前より左下腿に紫斑,潰瘍が出現.皮膚生検で真皮全層に多核巨細胞を混じる出血性壊死性肉芽腫性病変と,小静脈のフィブリノイド変性を伴う二次的な血管破壊像を認めた.肺,腎病変はなかった.自験例でみられた壊死性出血性肉芽腫性炎症は,白血球破砕性血管炎と共に多発血管炎性肉芽腫症の特徴的な病理組織像である.皮膚病理組織からみた多発血管炎性肉芽腫症と,MPO-ANCA陽性例の特徴について考察した.