広島大学皮膚科で治療した176例の重症熱傷症例を,55例の小児科と121例の成人例に分けて比較検討し,小児重症熱傷治療の現状について成人との相違を明らかにするとともに,その治療の問題点も検討した.小児では成人に比べ加熱液体による受傷が多く(p<0.001),気道熱傷の合併率は低かった(p=0.05).平均熱傷面積は44.7%体表面積であり成人とは有意差を認めなかったが,平均burn index(BI)は25.9,平均SCALDS scoreは14.5であり成人に比べて有意に低かった(BI:p<0.05)(SCALDS score:p<0.01).手術治療では,一回の手術範囲の決定の目安とした体重当たりの出血量は小児で20.8ml/kg,debridementの平均面積は13.2%BSAであり,ともに成人とは有意差を認めなかった.一方,手術時間と麻酔時間は手術面積に影響され,小児は成人に比べ有意に短かった(p<0.01).予後は成人の救命率が71.9%であるのに対して,小児は96.4%と有意に高く良好であった(p<0.001).さらに救命できた代表的な症例として,熱湯による受傷の6歳男児で熱傷面積:83%,BI:42の症例と,火炎による受傷の3歳男児で熱傷面積:76%,BI:70の症例を示した.小児例は受傷原因が成人例とは大きく異なっており,その重症度も低い.また成人に比べ初期輸液量が相対的に多くなり,コロイドの早期投与も必要であった.一方,局所治療でも深達性Ⅱ度熱傷例が多いため,多くの症例では早期手術は必要ないことなど,成人と相違することが多いことが明らかになった.したがって,小児重症熱傷患者を治療する場合は,このような相違点と問題点を十分把握したうえで,治療に臨む必要があると考えられた.
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