生物学的製剤が乾癬に使用可能になり今年で6年目となり,今まで治療に難渋していた広範囲に皮疹が及ぶ尋常性乾癬,関節症性乾癬,全身性膿疱性乾癬などの重症乾癬患者に対して福音をもたらした.しかし,その使用に際しては日本皮膚科学会から認定された一部の病院でしか導入できないのが現状である.そのため,患者サイドではいまだに生物学的製剤について認識されていないこと,また,医師サイドからもその使用経験がないことから生物学的製剤を使用に踏み切れないことが多いと考えられる.しかし,現状は認定病院だけで生物学的製剤を投与している患者を治療していくことは困難である.当診療所では2年前から生物学的製剤を使用していることから,我々の試みを紹介することで将来のクリニックレベルでの生物学的製剤使用のモデルになることを期待したい.
現在,乾癬に対してはTNF-α,IL-12/23,IL-17Aに対する生物学的製剤が用いられているが,その使用に際しては免疫機能の抑制が懸念されてきた.長期間の臨床成績がまとまり,感染症や悪性腫瘍の発生のリスクのデータも集積されつつあり,十分な説明と慎重な検査を施行すれば,過敏になる必要もない.これまで,筆者らは生物学的製剤使用中の中等度~重症の乾癬患者末梢血のサイトカイン産生能や白血球の活性化等,免疫機能への影響を検討してきた.その結果,血球系では単球や好中球の活性が重症の尋常性乾癬患者では高く,生物学的製剤の使用にて,その活性が正常域まで低下することが判明した.筆者らの集積したデータを詳述すると共に,今後の検査で何が重要であるか解説する.
関節症性乾癬/乾癬性関節炎は,乾癬患者に発症するリウマトイド因子陰性の関節炎である.関節症状は進行性であり骨破壊が生じれば不可逆的であり,患者のQOLは著しく障害されるため,関節症状の啓蒙,診断,治療における皮膚科医の役割は重要である.関節症性乾癬/乾癬性関節炎の発症には複数の遺伝子が関与し,IL-23/Th17軸を中心とした免疫学的異常が病態を形成することが,基礎研究および臨床の現場における生物学的製剤の有効性によって実証されつつある.
全国の大学病院を対象に,掌蹠膿疱症性骨関節炎とSAPHO症候群の考え方に関する調査を行った.二つの病名を使い分けている回答は,使い分けていない回答数の4倍以上を占め,両者が同じであるとした回答は1割弱であった.掌蹠膿疱症性骨関節炎はSAPHO症候群に含まれるとした回答は5割で,似ているが異なるとした回答は3割であった.掌蹠膿疱症性骨関節炎をSAPHO症候群に統一するのがよいという回答は1割弱であった.以上より,大学病院では掌蹠膿疱症性骨関節炎とSAPHO症候群を意識的に区別して考えている傾向が予想以上に高く認められた.
水疱性類天疱瘡(BP)の罹患率に関して本邦には該当資料がないため,医療圏が限定されている地域で概算を試みた.宮城県南部地域11市町に開設されている皮膚科施設で,2008年1月から2012年12月までの5年間に診断されたBP患者数(男性28例,女性47例の計75例)をもとに罹患率を計算したところ,年間100万人あたり男性42.1人,女性68.2人,80歳以上では男性642.4人,女性606.3人であり,海外でなされた報告よりも多かった.なおこの集計は本邦におけるBPの罹患数を概算した初の試みである.
劇症型溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染症は,死亡率の高い疾患として知られており,A群溶連菌が代表的起因菌である.近年では,A群以外のβ溶連菌による報告が増えており,2006年以降,本邦の感染症法ではβ溶連菌によるものすべてが報告義務となった.
一方で,劇症型溶連菌感染症と同一の疾患ではないが合併することの多い,壊死性筋膜炎は報告義務がなく,単発的な症例報告にとどまる.今回,2011年から2015年の本邦報告例をまとめ,壊死性筋膜炎の定義,菌種別の臨床像の特徴,適切な手術介入について考察を行った.