顔面皮膚腫瘍の手術治療は整容的に問題となりやすく,治療は細心の注意が必要である.
手術治療は経験が必要であるが,基本となるポイントを押さえれば満足いく結果が得られる.実際に治療した症例を説明しながら,術前診断と外来手術(スキンサージャリー)について解説する.
壊死性軟部組織感染症の共通する治療方針として,十分な抗菌薬投与,迅速な外科的治療,適切な全身管理が三本柱であり,どの柱が欠けても治療は成り立たない.一方で,壊死性軟部組織感染症は,起因菌,発生部位,患者の基礎疾患など様々な要因によって,症例ごとに多様な臨床像,経過を呈する.救命することが最重要であるが,必要以上に過剰な侵襲を加えることは避けなければならず,症例ごとにベストの治療を模索する必要がある.
転移性皮膚癌260例の臨床的特徴と予後について解析を行った.原発臓器は乳腺が33%と肺が29%で全体の6割以上を占め,次いで腎,食道,胃,甲状腺が多かった.皮膚転移から原発癌の診断に至った症例は全体の17%であった.皮膚転移診断後の生存期間中央値は7カ月と極めて不良であったが,乳癌では疾患本来の予後を反映して56カ月と最も長かった.転移性皮膚癌の病変数(単発vs多発),診断契機(皮膚が先行vs原発が先行),治療(全切除vs姑息切除)は予後に有意な影響を持たなかった.転移性皮膚癌を治療する目的は延命ではなく,あくまで局所制御に基づくQOLの保持であることが示された.
目的:実地診療下において尋常性乾癬患者を対象にカルシポトリオール水和物/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル軟膏(ドボベットⓇ軟膏,以下Cal/BDP配合外用薬)で長期治療した時の有効性と安全性を検討する.
試験方法:体幹/四肢に病変部がある20歳以上の患者に,Cal/BDP配合外用薬を1日1回塗布した.4週間以上塗布して寛解に達した場合は維持療法に移行し,維持療法中の再燃・再発時にはCal/BDP配合外用薬を再開して1年間治療した.
結果:m-PASIスコア変化率,PGA,DLQIスコアは4週後から有意に改善し,改善効果は1年間維持された.皮膚萎縮・末梢血管拡張・紅斑の重度の悪化例や重篤な有害事象は認められなかった.
結論:Cal/BDP配合外用薬の長期治療は実地診療でも有用で,忍容性も良好なことが示唆された.
63歳,男性.左母趾爪甲全体を濃淡不整な褐色の線条が占め,Hutchinson徴候を伴いmelanoma in situの診断で末節骨直上で切除.病理では爪母から爪床,趾尖の基底層に卵円形の腫瘍細胞が孤立性,胞巣状に増殖.爪床遠位から趾尖の真皮内には大小不同の紡錘形の腫瘍細胞が膠原線維の増生を伴って増殖していた.腫瘍細胞はS-100陽性,Melan-A陰性で,HMB-45染色は表皮内病変のみ陽性であった.爪というまれな部位に生じ,腫瘤は目立たず色素斑のみの所見が特異であった.