ステロイド剤の局所・全身投与を補助療法として用いた3例のマムシ咬傷について,本症におけるステロイド剤使用の有益性と問題点を考察した.症例1:60歳女性.左大腿部外側に受咬し,受傷後4時間目には炎症の波及抑制と症状緩和のために施行したステロイド局注の部位を避けながら紫斑と腫脹が急激に拡大した.マムシ抗毒素とステロイドセミパルス療法(500 mg/回)で上記の症状は軽減し,以後ステロイド剤の内服を漸減しながら略治した.症例2:57歳男性.右手首の受咬後48時間目には,患側上肢から胸部まで緊満性水疱を伴って硬性浮腫が拡大した.努力性呼吸と複視の併発に対してステロイドパルス療法(1,000 mg/回)を行い,症状と血液検査異常は速やかに改善した.症例3:11歳男児.右手示指への受咬後,プレドニゾロン(0.6 mg/kg/日)の内服により手背まで及ぶ腫脹と発赤,疼痛は劇的に軽減したが,その後ステロイド剤の内服中止により同症状が再燃した.3例とも受咬部の切開・排毒に加えてセファランチン,広域抗生物質,破傷風トキソイドによる標準的な加療を併用していた.本症におけるステロイド投与の有益性はいまだ未知数であるが,その強力な抗炎症作用と組織保護作用を踏まえて,今後適切な用法・投与時期を評価するに値する補助療法になると考えた.
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