2001 年 4 月から2006 年 4 月まで札幌皮膚病理研究所で診断した皮膚混合腫瘍(以下 MTS)のうち標本の再検討が可能であった 114例,1982 年から2004 年までに秋田大学医学部皮膚科で経験した 12 例,1994 年から2001 年までに山形県立日本海病院皮膚科で経験した 4 例の合計 130 例を用いて,MTS の臨床病理学的検討をおこなった.病理診断依頼書をもとに検討した臨床的事項では,男 78 例,女 52 例と男性に多く,切除時平均年齢は不明の 1 例を除いて 54.6 歳であった.発生部位は,不明の 1 例を除き,顔面がほとんどで 119例(92%)であった.臨床診断は,記載のあった症例のうち,皮膚混合腫瘍となっていたものは 13 例(10%)と少数であり,臨床診断と病理診断の一致率は低かった.切除標本の HE 染色標本を用いて検討した病理組織学的事項では,MTS には,基本所見として,断頭分泌をともなう腺管構造と Poroid cell および Cuticular cell よりなる汗管分化を示す管腔分化の両方を伴っていることを確認した.また,1)アポクリン型126 例(97%),一方エクリン型4 例(3%).2)筋上皮細胞分化所見であるPlasmacytoid cellは,130例中114例(88%)の例で観察された.3)毛包分化所見としては,角質嚢腫 61例(47%),毛球・毛乳頭への分化像19 例(15%),毛母への分化像1 例(1%),外毛根鞘への分化像11 例(8%),そして内毛根鞘への分化像が 6 例(5%)でそれぞれ観察された.また,54 例(42%)で毛芽細胞様細胞の集塊が観察された.4)明らかな脂腺分化像は 5 例(4%)で観察された.5)表皮連続性は9 例(7%)の例で観察された.6)充実性腫瘍胞巣部の割合は,55 例(42%)で多い,28 例(22%)で少ない,そして 39 例(30%)で中程度と判断された.8 例(6%)では充実性腫瘍胞巣部はなかった.7)間質の変化は,粘液腫様変化は,125例(96%),軟骨様変化 43例(33%),骨様変化は 11 例(8%),そして脂肪組織様変化 46 例(35%)であり,多くの例では複数の間質変化を観察することができた.そして,石灰化像が 4例(3%)で見られた.
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