日本皮膚科学会雑誌
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97 巻, 8 号
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  • 稲冨 徹
    1987 年 97 巻 8 号 p. 883-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
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    アトピー性皮膚炎におけるアデニレートサイクラーゼ系の異常につき検討した.アトピー性皮膚炎患者25例について血中cAMP値とその他のパラメータを測定,比較した.また,その内重症例5例については組織中のcAMPを測定した.その結果,本症においては,血中cAMP値が高く,重症度,血中LDH値,抹消血中好酸球数,合併症の有無と相関した.しかしながら,血中IgE値やCa値,家族歴の有無とは相関しなかった.また,本症では軽傷であっても比較的高値が持続した.組織中では皮疹部においてcAMP濃度が高く,ヒスタミンを加えると無疹部との差が大きくなった.以上の結果から,本症における血中cAMP値の基礎値の上昇並びに症状との相関を,いわゆる「アトピー」に見られる反応の臨床的表れの一つと考えた.その原因の一つにヒスタミンなどのケミカルメディエーターに対する感受性の亢進があると推察した.
  • 石田 洋子
    1987 年 97 巻 8 号 p. 889-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    毛盤は擦過により発赤,膨隆する.この機序を知る目的で,先ず,ウイスター系ラットの腹部の毛盤に分布する血管についてベルリン青注入法を用い光顕的に検討し,メルコックス注入法により走査電顕的観察を行った.次いで,毛盤に種々の物理的刺激を加える方法と,抹消血管収縮剤,拡張剤の薬物投与により毛盤の発赤,膨隆の機序について検討を行った.その結果,毛盤に毛盤毛の毛包漏斗部を環状にとりまき網目構造を呈する特異な血管網の存在が確認された.この血管網は毛盤の拡がりに応じた分布を示していた.毛盤が発赤,膨隆するという反応については,発赤は毛盤に分布する特異な血管網の拡張により,また膨隆は血管網の拡張に加えて毛細血管透過性の亢進も関与しているであろうと推察した.
  • 村山 史男
    1987 年 97 巻 8 号 p. 899-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    0.5%Griseofulvin(GF)含有飼料で飼育し,protoporphyriaを誘導したマウスの肝体重比,肝protoporphyrin(PP)含量,肝δ-aminolevulinic acid dehydrase(ALA-D)活性をGFの投与期間別に測定した.1)肝体重比は3週で約2倍,8週で約3倍に増加し,以後はplateauになった.2)肝PP含量は1週で約250倍に増加し,5週まで直線的に増加を続け,以後は増加の程度は徐々に小さくなった.3)肝ALA-D活性は3週までは約40%上昇したが,それ以降は徐々に低下し,8週以降では正常群よりむしろ低下する傾向がみられた.しかし,個々の実験動物の肝重量を加味して肝全体のALA-D活性を算出すると,3週まではほぼ直線的に増加し,以後はplateauになり,肝体重比,肝PP含量とほぼ同様の変化がみられた.以上のことから,GF induced protoporphyriaマウスの肝ALA-D活性は長期投与においても上昇しているとかんがえられた.
  • 佐藤 時子, 石井 正光, 浅井 芳江, 濱田 稔夫, 田中 あけみ
    1987 年 97 巻 8 号 p. 905-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    Conradi症候群の1例を報告した.症例は9歳女,家系内に同症を認めない.出生時よりほぼ全身に痂皮様皮疹,四肢短縮,X線検査にて骨端軟骨,肋軟骨に斑状石灰化像を認めたという.昭和57年12月初診時,ほぼ全身に魚鱗癬様皮疹および流線状配列を示す萎縮性局面を認める.低身長,四肢の短縮および左右差,脊柱の後側弯,右第3中手骨の短縮,右眼先天性白内障,頭頂部の瘢痕性脱毛を認めるが,爪甲・歯牙には異常なく,知能障害や心奇形も認めない.現在,軟骨の石灰化像もほぼ消失している.組織像:魚鱗癬様皮疹および萎縮性局面の2ヵ所から生検した.1.表皮の軽度菲薄化,2.過角化,3.毛孔の開大と角栓形成,4.真皮の血管周囲性の小円形細胞浸潤など両者に類似した所見が得られた.
  • 石田 明美, 飯塚 一
    1987 年 97 巻 8 号 p. 915-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
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    顔面に生じた3例の病理組織学的に特徴ある腫瘍を報告した.臨床的には尋常性疣贅ないし脂漏性角化症と診断された孤立性の表面やや疣状の丘疹であった.組織学的には腫瘍細胞索が表皮あるいは毛包漏斗部と連続して真皮側へ延び,漏斗状の陥入を示す両性の上皮性腫瘍で,毛を含み,下方では脂腺の付着や毛包下部への連続が見られた.腫瘍細胞の主体は,表皮の有棘細胞よりグリコーゲンを多く含むやや明調な細胞であった.PAP法で疣贅ウイルスは認めなかった.これらの腫瘍は主として毛包漏斗部に由来する良性腫瘍のprotorypeと考えinfundibular keratosisと仮称した.毛包漏斗部は形態的に表皮と区別しがたいために本症はこれまで組織学的にも脂漏性角化症・尋常性疣贅や老人性角化症などと診断され見過ごされていたと考えられる.
  • 向井 秀樹, 上村 仁夫, 西岡 清
    1987 年 97 巻 8 号 p. 923-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    長期間,慢性に経過したアトピー性皮膚炎患者の頚部に,しばしば特異な色素沈着がみとめられる.かかる色素沈着は,15歳以上の患者110例中39例にみられ,うち10症例についてその臨床および病理組織像を検討した.臨床的に本変化は,種々の湿疹様病変に引き続き,Langer割線方向に沿って正常色の線条隆起性局面として出現し,漸次拡大して皺状となる.その後,多くは線条間に一致して黒褐色調の色素沈着が出現,遂には皮膚萎縮,毛細血管拡張や脱色素斑などのポイキロデルマ様皮膚を呈する.組織的には,真皮上層に多量のメラニン滴落,毛細管の著しい増生・蛇行,リンパ管拡張,弾力線維の断裂・消失,ムチン沈着などがみられる.以上の所見より,本変化をポイキロデルマ様皮膚変化と命名し,アトピー性皮膚炎に伴う炎症後の色素沈着とその修復過程により生ずると考えた.さらに修飾増悪因子として,長期間のステロイド外用剤や慢性の機械的刺激などの関与が考えられた.
  • 永井 透
    1987 年 97 巻 8 号 p. 931-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    帯状疱疹におけるNK活性を測定し,その発症や治癒,重症度の決定におけるNK細胞を中心とした細胞障害機構の関与の有無について検討した.軽度群では,発症期にNK活性の一過性の上昇がみられたが,中等症群では上昇はなく,重症群ではむしろ発症期にNK活性の低下がみられ,内因性レベルの低下も推測された.重症例におけるNK細胞の機能的異常が示唆されたが,その詳細は不明である.IFN-β添加に対する反応性は正常であったが,IL-2に対する反応は重症度に関係なく一律に低下しており,これが本症の発症に関与している可能性も考えられる.遅延型皮膚反応や血清IgG値などの他の免疫パラメーターとNK活性との間に関連性は認められなかった.以上,帯状疱疹の発症,特にその重症度の決定にNK細胞が一定の関与をしていることが強く示唆された.
  • 佐藤 則子
    1987 年 97 巻 8 号 p. 937-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    平均年齢43歳の肝斑患者18名及び対照健康人(matched control)12名について月経周期別各種血中ホルモンすなわち,FSH,LH,PRL,progesterone(P4),17αOH-P4,cortisol(F),androstendione(⊿4A),testosterone(T),estradiol(E2)を測定比較し,本症と血中ホルモンとの関係を検討した.本症の卵胞期では,F値及び17αOH-P4値が正常に比し有意な高値を示し(各々,p<0.01,p<0.5),黄体期ではP4が正常に比し有意な高値(p<0.01)を示した.又個々の症例についてのP4/E2比も黄体期での本症の著明な高値を示した.さらに有意差は存在しなかったが本症では,黄体期のPRL及びE2を除く全てのホルモン値が平均値において高値傾向を示した.本症での黄体期におけるP4の著明な高値と,E2に比しての相対的な高値は,本症が経口避妊薬投与後の発症頻度が多いことや,時に黄体期に増悪が認められることと考えあわせると,本症が黄体期の卵巣機能のアンバランスと密接な関連を有していることを示唆する.
  • 柳沢 一明
    1987 年 97 巻 8 号 p. 945-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    皮膚科領域関連物質で癌原性が問題となっている物質について,培養ヒト線維芽細胞を用いDNA合成抑制試験を行った.癌原性既知の物質については7種中,無機砒素(NaAsO2),γ-BHC,クロム(K2Cr2O7),Cyclophosphamide,Griseofulvin,PCBの6種(85.7%)が陽性を示し,Polyethylene glycolのみ陰性を示した.また癌原性未知の物質5種についてDNA合成抑制試験を行ったところ,DNCB,Etretinate,Minocycline,有機砒素(Tetraphenyl arsonium)で陰性,Methoxsalenでは判定不能であった.さらに,これらの物質による皮膚病変や治療など皮膚科臨床との関係を述べ,核物質の突然変異原性試験および動物の発癌実験とDNA合成抑制試験の結果を比較考察した.
  • 大野 盛秀, 飯田 宏, 広瀬 統, 小島 肇, 長谷川 和富
    1987 年 97 巻 8 号 p. 953-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    温度,湿度,部位,および季節の違いによる人の顔面皮膚生理機能の変化を測定する目的で,皮表脂質量(皮脂量と略す),角質水分量(水分量と略す),皮膚表面温度(皮表温度と略す),および皮膚表面pH値(PH値と略す)を,恒温恒湿室内(風速0.15m/秒以下)で座位安静1時間後に測定した.同時に,これらの石けん洗顔(30℃の温水使用)(洗顔と略す)による影響も調べた.室内温度(室温と略す)は17~29℃で,室内相対湿度(湿度と略す)は40~80%の間を変化させて測定した.1)皮脂量は,室温,湿度,季節,および部位の違いによる変動を示さなかった.皮脂量が,洗顔後に前の値まで回復するのに要した時間(回復時間と略す)は,秋の前額部を除き室温の上昇とともに短縮された.秋が冬より,また,頬部が前額部より洗顔後の皮脂量は早く回復する傾向を示した.湿度の変化は,皮脂量の回復時間に影響を与えなかった.2)水分量は,室温上昇とともに増加し,室温22℃以上で著明に増加する傾向を示した.水分量の季節別比較では,室温17℃および22℃において頬部では秋が冬より高値であったが,前額部に季節差はみられなかった.水分量の部位別比較では,冬は前額部が頬部より高値であったが,秋に部位差はみられなかった.湿度40%に比し湿度80%における水分量が有意に高値であった.水分量の回復時間は,室温,湿度,季節,および部位に関係なく5分以内であった.3)皮表温度は,室温の上昇につれて高値を示した.しかし,秋測定した室温25℃と29℃との皮表温度間では,統計的に有意な上昇はみられなかった.皮表温度の季節別比較では,冬が秋より0.9~1.4℃高値であった.室温17℃および22℃における皮表温度の部位別比較では,秋は前額部が頬部より高値であったが,冬に部位差はみられなかった.湿度は皮表温度に影響を与えなかった.洗顔直後の皮表温度の下降温度幅は,前額部より頬部が,また,冬より秋が大きかった.皮表温度の回復時間は5~15分で,室温の上昇とともに短くなり,前額部より頬部が,また,秋より冬が短い傾向を示した.洗顔に関係なく,皮表温度は外気温より測定時室温が低下している場合に室温の変化に影響を受けやすく,とくにそれは前額部より頬部に著明であった.湿度は皮表温度の回復時間に影響を与えなかった.4)PH値は,室温,湿度,および季節の影響を受けなかった.秋は室温22℃を除き洗顔後30~135分で回復したが,冬は各室温ともに洗顔後120分以内にPH値は回復しなかった.また,湿度40%ではPH値は洗顔後150分までに回復しなかった.
  • 宮元 千寿, 車地 祐子, 佐藤 吉昭, 河野 正恒
    1987 年 97 巻 8 号 p. 965-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    夏季に露光後,主として四肢に瘙痒性の漿液性丘疹が出現した11歳男子の1例を報告した.皮疹は融合することはなく,長時間露光後のみ顔面にも出現する.その病理組織学的所見は,表皮の海綿状態と水疱形成,exocytosisおよび真皮上層の稠密な血管周囲性小円形細胞浸潤である.光線のスクリーニングテストで異常はなかったが,2MEDの連日3日同一部位反復照射後,漿液性丘疹が誘発され,その病理組織像も本来の皮疹とほぼ同一の所見を示した.以上より本例をElpernの提唱したpapulovesicular light eruptionと診断した.
  • 1987 年 97 巻 8 号 p. 969-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
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