マウスB16メラノーマに対しマウスrecombinant β-interferon(rIFN-β)局注と局所microwave温熱の併用療法を施行し,腫瘍の著明な退縮効果を観察した.その機序を検討する目的で,マウスB16メラノーマにrIFN-β局注あるいは局所温熱の各単独療法,および両者の併用療法を施行した場合のメラノーマに浸潤する免疫細胞の同定および分布の観察を行った.その結果,rIFN-β局注療法単独では無治療の腫瘍に比べ,腫瘍巣,腫瘍周囲の間質にT細胞,macrophageが稠密に浸潤しているのが認められた.局所温熱療法単独では,NK細胞,macrophageが稠密に浸潤しているのが認められた.rIFN-β局注と局所温熱療法併用療法では上述の単独療法に比べて,強い抗腫瘍効果が観察され,浸潤細胞では,T細胞macrophageの著明な細胞浸潤を認めたが,NK細胞は全く認められなかった.この現象の説明は現時点では詳細は不明であるが,本療法によるメラノーマ細胞における接着分子の発現に何らかのmodulationが引き起こされている可能性が考えられた.この動物実験の結果をもとに,再発性あるいは転移性の悪性黒色腫2例にヒト線維芽細胞由来IFN-β局注療法とmicrowave局所温熱療法の併用療法を行った.その結果,本療法の治療効果に原発性と転移性で大きな差異がみられ,前者では有効,後者では無効であった.これら2例の悪性黒色腫の治療前病理組織像が,原発巣では表皮内に異型細胞の胞巣を認め,真皮に強い反応性細胞浸潤がみられたのに対し,転移例では真皮内の転移病巣に対する細胞浸潤が全くみられなかった.これらのことより,本治療に対する悪性黒色腫の反応の違いは,有効例では,あらかじめ腫瘍巣に存在していた浸潤細胞が免疫療法により活性化され,メラノーマを退縮させた可能性があり,腫瘍巣に対する反応細胞浸潤の有無がrIFN-β,温熱療法の有効性と関係している可能性が示唆された.以上の臨床及び基礎的検討結果より,ヒトIFN-β局注療法と局所温熱療法の併用療法は,腫瘍巣に対する生体の免疫反応(反応性細胞浸潤)が認められる悪性黒色腫に有効と考えられ,浸潤細胞の無い転移巣では浸潤細胞を,何らかの手段で,誘導し,その後に本療法を施行する方式の検討が必要と思われた.
抄録全体を表示