男性における脂腺の年齢による形態的変化を明らかにするために,7歳から77歳まで16例の男性の前額部の正常皮膚の生検材料より連続切片を作成し,三次元画像解析システムを用いて脂腺腺葉の最大断面積,体積および脂腺細胞の体積,細胞数を測定した.また,電顕的に各脂腺の微細構造を検索した.脂腺の体積値は10歳代に著明に増大し,20~40歳代で最大となり,60歳代から縮小する傾向を示す.脂線腺葉の最大断面積は,20歳以後加齢による明らかな変化を示さなかった.脂線細胞の数は腺葉の体積に正の相関を示すが,細胞の大きさは同一の腺葉においても差異が大きく明らかな相関は認められなかった.しかし,脂腺細胞は16歳,45歳,77歳例の比較では45歳例が最も大きく77歳例がこれに次いだ.電顕的に,大きな脂腺の周辺細胞は,立方形で3~4層,小さい脂腺の周辺細胞は,扁平で1~2層であり,成熟脂腺細胞は大小の脂質滴が充満していた.これらの結果から男性の脂腺腺葉は,小児期から成人期にかけては脂腺細胞の数,体積とも増加して急速に腺葉の体積の増加を示すが,20~50歳代では加齢による変化は明らかではないと言える.これはこの年代の男性のテストステロン値に個人差が大きい理由も考えられるが,皮脂の分泌量で表わされる脂腺の機能が40歳代には減衰する傾向と合致せず,今後さらに検討が必要である.しかし60歳以降では脂腺細胞の数も体積も減少して腺葉が萎縮することが明らかになった.さらに,男性の脂腺の加齢による形態の変化は,女性の脂腺が20歳代を最大値として明瞭な変化を示すのと大きく異なることが明らかになった.
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