治療抵抗性の天疱瘡への対策として,治療導入期に病変が急速に拡大する症例では,早期から免疫抑制薬を併用したり,血漿交換療法やステロイドパルス療法の導入を準備すること等を検討する必要がある.治療維持期に再燃・再発を繰り返す症例に対しては,免疫グロブリン大量静注療法を併用しながらステロイドを減量する方法が検討される.今後,天疱瘡へのリツキシマブの保険適用拡大が期待され,治療戦略が大きく変わることも予想される.
天疱瘡ではデスモグレインに代表される抗原に対して自己抗体が生じることで結果的に水疱形成を生じるが,その過程には様々な機序があることが近年の研究で明らかにされつつある.本稿では解明されたそれらの機序について説明し,また,それを標的として開発されている治療法について紹介する.ここで紹介する治療法のいくつかは,いずれ臨床の現場で使用可能となることが期待され,天疱瘡治療の“New Era”の到来が待たれる.
自己免疫性水疱症のうち,表皮基底膜領域蛋白群に対する自己免疫反応による疾患群は自己免疫性表皮下水疱症(類天疱瘡群)と呼称される.患者皮膚検体のみならず,培養細胞や動物実験を用いた実験系によって,近年類天疱瘡群の知識は飛躍的に高まるとともに,治療の選択肢も増えつつある.本稿では,類天疱瘡群の代表的疾患である水疱性類天疱瘡を中心に,診断法の進歩と病態を概説する.
当院でデュピルマブを投与した34例について,経過中の各種スコアや採血データ,副反応等をまとめ,考察を加えた.IGA,EASI,BSAおよびPOEM,DLQIは全例改善した.また,LDH,IgE,TARCはほぼ全例で低下した.副反応として,好酸球上昇が13例,アレルギー性結膜炎・眼の瘙痒・発赤が15例,咳嗽・喘息が6例,単純ヘルペスが4例,カポジ水痘様発疹症,乾癬様皮疹,剝奪性皮膚炎が各1例みられた.中止せざるを得ない重篤な副作用はなく,デュピルマブは比較的安全に使用できる有効な薬剤と考えた.
皮脂欠乏症は乾皮症と同義であり,加齢により生じる老人性乾皮症や皮膚機能が未成熟である乳幼児に生じるもののほか,アトピー性皮膚炎や魚鱗癬あるいは糖尿病や慢性腎臓病などの疾患に併発すると共に,一部の抗がん剤や放射線治療などに伴っても生じる.皮膚乾燥はしばしば瘙痒を伴い,搔破によって湿疹などの状態になることから,セルフメディケーション製品を含めた保湿剤による治療を疾患や病態に合わせて行う必要があるものの,明確な治療基準は存在しない.そのため,治療に関する指針が定められることが望まれる.