各種上皮性腫瘍を主として螢光法 (Falck & Hillarp) をもちいて腫瘍巣中にみられるメラノすイトにつきその位置および分布, Dopa にもとづく特異螢光の有無,そしてかかるメラノサイトと腫瘍細胞のメラニン保有の程度等の関係につき検討し,えられた所見のうち主なものは下記する如くである.1, 良性非母斑性黒色上皮腫第 U 型では腫瘍細胞は豊富にメラニンを含有し,基底層に.位置するメラノサイトは特異螢光を有する例とこれを欠く例とがあった.また螢光性メラノサイトの樹枝状突起は明瞭でなかった. 2.良性非母斑性黒色上皮腫中間型にあってはメラニンを含有する基底細胞様細胞増殖部では明瞭な樹枝状突起をもつ螢光性メラノサイトが主として基底層に位置し,メラニンにとぼしい有縁細胞様細胞増殖部では腫瘍細胞間に螢光性メラノサイトの共棲をみた. 3.脂漏性角化症由来の表皮内表皮腫の1例では,表皮内巣を構成する腫瘍細胞はメラニンを含有し,その間に多数の螢光性メラノサイトの共棲をみた. 4.色素性基底細胞上皮腫では腫瘍巣中に多数のメラノサイトの共棲をみる部もあったが,特異螢光を発するものと欠くものとがあった.螢光性メラノサイトはメラニンにとぼしい腫瘍細胞巣にみられ,特異螢光を欠くメラノサイトはかなりメラニンを有する腫瘍細胞巣にみられ,その樹枝状突起は長く,太く,胞体も大型であった. 5.乳房外 Paget 病にあっては軽度な病変ではメラノサイトは基底層に主として位置し,病変が高度になるにつれてメラノサイトは基底層をはずれ,腫瘍細胞巣を囲む有縁細胞間あるいは腫瘍細胞間にみられる.これらメラノサイトはいずれも特異螢光を発し,明瞭な樹枝状が突起を示し, Paget 細胞内のメラニンはないか少量である. 6.老人性角化症萎縮型では,基底層より1~2層上層あるいはメラニンにとぼしい腫瘍細胞間に螢光性樹枝状メラノサイトをみとめた. 7,有棘細胞癌中メラノサイトの共棲をみた例は,poorly keratinizing squamous cell carcinoma 2例と pseudoglandular squatnous cell carcinoma 1例であった.腫瘍細胞内にメラニンはなく,メラノサイトは特異螢光を発し,明瞭な樹枝状突起を有していた.以上の成績をもとにソラニンで充満したメラノサイトが基底層をはずれ,腫瘍巣中に共棲する病変を通覧すると Paget 病を除けば基底細胞様細胞の増殖を特徴とする疾患のようにおもわれた.
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