本邦において足底に加えて手掌,手背,足背の色素性母斑の有病率や,色素性母斑の経年的な変化の追跡調査などの報告は少ない.さらに乳幼児に関しては,色素斑の疫学的報告は海外をあわせてもかなり少ない.そこで我々は,石垣島に在住の就学前の0歳から6歳の乳幼児に対し,2004年と2006年に計1,011例の検診を行い,手足の色素性母斑を統計学的に検討した.部位別の有病率は露光部である手背が最も多く5.7%であり,ほか手掌2.5%,足底3.3%,足背2.2%であった.また年齢別による有病率は0歳~1歳は3.6%であったが,その後徐々に増加し,3歳で約16%まで増加した後は横ばいであった.色素性母斑の部位による大きさには有意差はなかったが,足底にある例は他部位より大きい傾向にあった.2年間の追跡調査では,2004年に存在していた色素性母斑11例中5例(45.5%)は存続し,6例(54.5%)では消失していた.2004年に色素性母斑を全く認めなかった78例中,2006年に新たに色素性母斑が出現していた例は13例(16.7%)であった.今回の調査によって,乳幼児の手足の小型の色素性母斑は,自然消失する例も多いが,新生する例も多い事が明らかになった.
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