Bilateral segmental neurofibromatosisの1例を報告した.症例は,73歳の男子.20歳頃より躯幹に色素斑が集簇性に多発し,その後,柔らかい小結節が躯幹に漸次増加してきた.初診時,左上腹部に雀卵斑様色素斑が集簇性に多発し,左季肋部に径2~3mmの赤褐色丘疹が4個存在した.右腹部には径2~7mmの赤褐色丘疹ないし小結節が多数帯状に存在した.雀卵斑様色素斑は,右下背部および両側腰部にも集簇性に見られ,右下背部の局面には,同様の丘疹が2個存在した.雀卵斑左様色素斑と,丘疹ないし小結節の分布は必ずしも一致せず,それぞれ別個に,segmentalに限局して配列し,両側に存在した.カフェオレ斑およびLisch noduleは認めない.家族に,neurofibromatosisの症候を認めない.丘疹の組織所見は,神経線維腫であった.Segmental neurofibromatosisは,Riccardiが,多発性の神経線維腫とカフェオレ斑が,ある体節に限局して片側にのみ存在し,家族歴を有さぬものと定義したが,神経線維腫のみの例も,Segmental neurofibromatosisとして発表され,混乱を招いている.少なくとも2つ以上の症候を伴った例のみをSegmental neurofibromatosisとすべきとの考えに基き,これまでの報告例を検討したところ,英文文献例で24例(うち両側性6例),本邦で自験例を含め8例(うち両側性3例)が,これに該当した.英文文献例ではカフェオレ斑が,本邦例では雀卵斑様色素斑が,より高率に見られる所見であった.
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