グリコーゲンは組織化学的に証明出来る多糖類としてClaude Bernard以来数多くの研究がなされて来た.即健常皮膚に就てはBollinger et al.,Stoughton et al.,Montagna et al.,Warren,Dupre,Braun-Falco等の検索があり,汗腺の分泌機能との関連に於てはMontagna et al.,Shelley et al.,Rothman,Cor-mia et al.,小堀他等の報告をみる.更に病変部所見としてBraun-Falco,Steigleder等はアカントーゼを呈する疾患に於て.表皮突起中央部に高度のグリコーゲン蓄積あるを指摘してアカントーゼとの関係につき論じ,Steinerは萎縮性病変部よりも増殖性の過程にあるものに屡々より多量のグリコーゲンが蓄積するのを観察している.しかしかゝるグリコーゲン蓄積の意義に関しては各種の病理学的及び実験的観察に基く臆測がなされているに過ぎない.即ちBunting(動物表皮の創傷),Bradfield(雪状炭酸),Washburn(火傷),Lobitz et al.(スコッチテープ剥離実験),Argyris(Methylcholanthrene塗付実験)等は細胞増殖とグリコーゲン蓄積との間に関連あることを指摘している.しかしながら組除こ於けるグリコーゲン蓄積の証明は唯単に検索を行つた期相に於けるグリコーゲン蓄積の状態を示すものであつて,いわば動的な過程を静的な面で捕えているに過ぎず,表皮に於けるグリコーゲンの蓄積を論ずるにあたつては,その動的の過程に対する観察が必要となつて来る.
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