【目的】I型コラーゲン上で培養した正常ヒトケラチノサイト,正常ヒト線維芽細胞の細胞増殖に対して,bFGF原体溶液(超純水で溶解)とフィブラスト
®スプレー溶液(添付溶解液で溶解)とがその高濃度(100~1,000 ng/ml)で異なった効果を示した原因を検索した.【方法】5日間の細胞増殖アッセイにより,3種類のbFGF溶液―bFGF原体溶液(超純水で溶解)とフィブラスト
®スプレー溶液2種(添付溶解液,または超純水で溶解)―の両細胞種に対する細胞増殖への効果を比較した.bFGF濃度は1,000 ng/mlまで調べた.また,添付溶解液のみ,塩化ベンザルコニウムのみの影響も同細胞増殖アッセイにより調べた.【結果】3種類のbFGF溶液はいずれも両細胞種の細胞増殖を濃度依存性に促進した.その細胞増殖促進効果は,両細胞種に対してとも,bFGF原体溶液とフィブラスト
®スプレー溶液(どちらも超純水で溶解)とでは同じであった.しかし,フィブラスト
®スプレー溶液(添付溶解液で溶解)は,両細胞種に対して,高濃度(1,000 ng/ml)で,他2種のbFGF溶液に比べて,細胞数の有意の減少と細胞形態の変化とを起こした(ケラチノサイトでは100 ng/ml濃度でも).高濃度bFGF含有培地作製時用量のフィブラスト
®スプレー添付溶解液のみを含む培地投与,さらに塩化ベンザルコニウムのみを含む培地投与においても同様の所見があった.【結論】フィブラスト
®スプレー溶液(添付溶解液で溶解)は,高濃度(100~1,000 ng/ml)で,他2種のbFGF溶液(どちらも超純水で溶解)に比べて,両細胞種の細胞増殖を抑制した.その原因は添付溶解液中の塩化ベンザルコニウムの細胞毒性であった.本研究結果は,フィブラスト
®スプレーの両細胞種に対する細胞増殖促進効果を最大限に得るためには添付溶解液に塩化ベンザルコニウムを加えない方が良いことを示した.
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