アレルギー性接触過敏反応の影響及び免疫学的寛容誘導の効果が,two-stage carcinogenesisによる実験的腫瘍発生にどのような影響を及ぼすかを,A/Jマウスに対して,DNCB,TNCB,DNBS-Na及びTNBS-Naを用いて,実験的な検討を行ない以下の結果をえた.1.DNCB及びTNCBにて感作されたマウスでは,未感作マウスに比して,共に反応惹起部位の表皮基底細胞の分裂細胞数の増加を認めた.2.DNBS-Na及びTNBS-Naにて前処置され免疫学的寛容状態を誘導されたマウスでは,感作マウスに比して,反応惹起部位の表皮基底細胞の分裂細胞数の減少を認めた.3.DNCB感作―反応惹起をinitiation,promotionに先だつ前処置とする群は,型どおりinitiation,promotion処置の対照群と比較して,発生腫瘍数の増加を認めた.又,initiation後にDNCB感作をおこないpromotionを継続した場合は,対照群に比し,発生腫瘍数が有意の差で多く認められ,さらにDNCB感作―反応惹起群と比較すると腫瘍発生数の増加傾向を認めたが,有意の増加率を示さなかった.TNCB感作―反応惹起を行なった群では,対照群に比して腫瘍発生数の抑制傾向が認められ,DNCB感作群とTNCB感作群では逆の結果を示した.4.DNBS-Na及びTNBS-Na前処置による免疫学的寛容誘導群では,腫瘍発生数は対照群と比して差がなく,増加あるいは減少傾向をともに認めなかった.以上の結果から実験的腫瘍発生に対する遅延型免疫反応の関連をみると,感作物質の違いが腫瘍発生数に大きな影響を有する点と,免疫学的寛容の誘導は腫瘍発生に影響を及ぼさぬことが示唆された.
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