環境の気温,湿度の変化は,角層が水分を保持するうえにどのように影響するか,また,それに従って角層の水分含有量はどのように変化するかを検討した.長期間異なった条件下で,健康男子2名の前腕屈側において,角層水分含有量と水分保持に関与する角層機能の測定を行い,あわせて皮表からの水分の蒸散water loss by evaporation(WLEv)を測定した.正常角層においては,WLEvと室温との間に正の相関関係があり,角層水分含有量もまた室温との間に正の相関関係を有していた.同時に角層水分含有量とWLEvとの間にも正の相関間関係が認められた.発汗の始まる22℃から24℃の間で,WLEvの上昇はより顕著となり,同時にこの温度において角層水分含有量も著増する傾向にあった.角層の水分保持能も室温と湿度に対し正の相関関係を示した.水分保持能が湿度に相関することは当然であるが,室温との間にも相関関係がみられたことに関しては,汗の中の物質が関与するものと推測した.気温の上昇はWLEvの亢進を,湿度の上昇は角層の水分保持能の亢進を生じ,夏季の角層水分含有量の増加に働くものと結論した.