2001年5月から2006年8月までの間に,札幌皮膚病理研究所で脂腺癌と病理診断した61例について,臨床的検討を行った.男性27例,女性34例と女性に多く,切除時年齢は,34から95歳で平均74.0±12.1歳であった.発生部位は,不明の1例を除き,眼瞼が21例(35.2%),眼瞼以外の頭頸部25例(38.9%),頭頸部以外14例(24.1%)であった.脂腺母斑上に生じた例が2例あった.眼瞼発生例は,男性8例,女性13例,切除時年齢は,平均76.1±11.0歳,眼瞼以外の頭頸部発生例は,男性9例,女性16例,切除時年齢は平均75.3±11.0歳,頭頸部以外の発生例は男10例,女4例,切除時年齢は平均68.9±14.8歳であった.女性は,男性に比べて,有意に眼瞼を含む頭頸部に発生が多かった.臨床診断では,眼瞼発生例で脂腺癌を含む悪性腫瘍と診断されている例が61.9%であったのに対し,眼瞼外発生例では,35.9%と少なく,良性腫瘍と臨床診断されていた例が46.2%と比較的多かった.検体を提出した診療科は,眼瞼発生例では,皮膚科2例(9.5%),形成外科6例(28.6%),眼科9例(42.9%),その他の科は12例(19.7%),不明5例(8.2%)であり,眼瞼発生例では,皮膚科2例(9.5%),形成外科6例(28.6%),眼科9例(42.9%),その他の科は2例(9.5%),不明2例(9.5%)であり,眼瞼外発生例は,皮膚科21例(53.8%),形成外科6例(15.4%),眼科0例,その他の科10例(25.6%),不明2例(5.1%)であった.同時期に札幌皮膚病理研究所で病理診断した症例数を比較すると,脂腺癌は,基底細胞癌の約1/30,進行期有棘細胞癌の約1/15,進行期悪性黒色腫,あるいは乳房外Paget病の約1/3である一方,汗孔腫癌やアポクリン腺癌などの各種悪性汗腺腫瘍よりは多かった.良性の脂腺腫瘍である脂腺腫は,脂腺癌の約3倍の症例数があり,脂腺腺腫は脂腺癌の半数以下の例数であった.
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