日本皮膚科学会雑誌
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100 巻, 14 号
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  • 稲沖 真
    1990 年 100 巻 14 号 p. 1405-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
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    黄色ブドウ球菌のepidermolytic toxin A(ETA)の表皮内裂隙形成作用におけるプロテイナーゼおよびCa++の関与を,組換え型ETA(rETA)を用いて検討した.ETA遺伝子により形質転換された大腸菌の細胞周辺腔からrETAを抽出し,それをゲル濾過カラムとイオン交換カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより精製した.精製rETAはα溶血素やETBを含まず,その活性は5,000epidermolytic unit/mgであった.ETA遺伝子の塩基配列から成熟ETAは242個のアミノ酸からなる26,946daltonの蛋白質と推定された.新生仔マウス皮膚の器官培養においてrETAは5μg/ml以上の濃度で4時間後に表皮上層に裂隙を形成した.rETA10μg/mlを添加した器官培養において,α2・マクログロプリン,N-エチルマレイミド,ロイペプチン,L-transepoxysuccynyl-leucylamide(4-guanidino)butane,phenylmethylsulfony fluorideおよびペプスタチンAは裂隙形成を阻害せず,エチレンジアミン四酢酸,ethyleneglycol-bis(2-aminoethylether)tetraacetic acidおよび8-(N9N-diet-hylamino)octyl3,4,5-trimethoxybenzoateは0.1~1mMの濃度で裂隙形成を阻害した.これらの薬剤による阻害反応は培地にCa++を添加したとき起こらなかった.得られた成績から,ETAは細胞内Ca++濃度の上昇を介して表皮内裂隙を形成すること,またその細胞内Ca++濃度の上昇は細胞内Ca++貯蔵部からの放出および細胞内へのCa++流入のいずれかまたは両者によって起こることが強く示唆された.
  • 筒井 清広
    1990 年 100 巻 14 号 p. 1415-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
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    数種の表皮細胞動態指標の経時的変動の解析により,tape strippingにより増殖活性の亢進したモルモット表皮に対する8-MOP+UVA(PUVA)1回処置の作用を検討した.表皮の細胞動態指標として,フローサイトメトリーにより測定されたS期細胞の分画(S分画)とG2+M期細胞の分画(G2+M分画),プロモデオキシウリジン標識指数(LI)および核分裂指数(MI)を用いた.対照に比べて,PUVA処置後の表皮ではS分画およびLIの値は共に3時間後に軽度の減少を示したのち増加した.PUVA0.5~1J/cm2照射の範囲内では,照射量の増加とともにS分画増加のピークはより高くなり,LI増加のピークはより低くなる傾向がみられた.G2+M分画値は12時間後まで減少し,24時間後から168時間後まで対照レベルより低いかまたはそれを僅かに超える程度で,照射量の増加とともにMIの低下期間が延長する傾向がみられた.得られた結果から,stripping後PUVA1回処置を行った表皮では,PUVA処置の3時間後までDNA合成の抑制とG1-S境界の不完全ブロックが起こり,次いでDNA合成は亢進し,部分的に同調した細胞はS期へ流入し,さらにG2期へ流入するが,PUVA処置後より継続するG2-M境界ブロックのため細胞は一定期間G2期に蓄積するものと推測された.なお,PUVA処置により起こるG2-M境界ブロックとそれに伴う核分裂の減少は,正常表皮に比べて,stripping後の表皮ではより長く継続することが明らかにされた.
  • 朝田 真木, 黒川 一郎, 西嶋 攝子, 朝田 康夫
    1990 年 100 巻 14 号 p. 1423-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    正常ヒト成長期毛包の外毛根鞘におけるケラチンの存在様式を頭皮10例について11種の抗ケラチン単クローン抗体を用いて免疫組織化学的に検討した.分化型cytokeratin 1,10,11は漏斗部の中間層および顆粒層に存在した.漏斗部と毛峡部では一線を画して明らかに異なるケラチン発現を認めた.一方,未分化細胞の指標とみられるcytokeratin 19は特徴的に毛峡部の外毛根鞘の最外層と下部毛包の一部に認められ,また過増殖を示す上皮細胞の指標とみられるcytokeratin 16は漏斗部基底層と毛峡部以下の外毛根鞘に広範に認められた.以上の結果より,漏斗部は表皮と同様のケラチンの発現を示し,毛峡部より下方の外毛根鞘は毛軸に沿った内上方に向かう分化方向が示唆された.また,外毛根鞘はheterogeneousなケラチンの集まりの細胞で構成されていると考えられた.
  • 中村 尚, 影下 登志郎, 平井 俊二, 木村 達, 吉井 章, 小野 友道, 荒尾 龍喜
    1990 年 100 巻 14 号 p. 1431-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    基底細胞癌(BCC)におけるHLA classⅠおよびclassⅡ抗原の局在をHLA classⅠ,β2-microglobulin,HLA-DR,DPおよびDQに対するモノクロナール抗体を用いて免疫組織学的に検討した.ClassⅠ抗原は,異なった2種類の抗体を用いたBCC16例中それぞれ13例および15例の症例に観察された.しかし,正常表皮にくらべその発現は弱かった.Β2-microglobulinでは,BCC16症例中6例が正常表皮とほぼ同程度に染色され,8例は正常表皮より弱く染色され,2例は全く染色されなかった.ClassⅠの発現とBCCの組織型およびリンパ球浸潤との相関は認められなかった.一方,ClassⅡ抗原では,抗DR,DP,DQ抗体でBCC16例中それぞれ4,3,3例に陽性を認めた.陽性細胞は,BCC腫瘍細胞の1~2%であった.HLA classⅡ抗原の中で,HLA-DRが最も反応が強くDPとDQはDRよりも弱く,ほぼ同程度の染色性を示した.
  • 鈴木 裕介, 音山 和宣, 片山 一朗, 西岡 清, 西山 茂夫
    1990 年 100 巻 14 号 p. 1437-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    過去16年間に当科受診のリベド病変患者(膠原病併発例を除く)72名にアンケート調査を施行したところ,現在皮膚症状消褪中25名,不変29名,拡大増悪中18名であった.このうち拡大増悪中の群では,他の2群に比して明らかに潰瘍・結節化をきたしやすく,合併症として脳血管障害を併発している例が多かった.このような症例は従来のリベド病変から独立させるべき1群ではないかと考え,拡大増悪群と現在通院中のリベド病変患者計21名につき血中カルジオリピン抗体(anti-cardiolipin antibody,aCL)をELISA法で測定し,その陽性・陰性によって臨床・組織像,臨床検査成績,脳magnetic resonance imaging(MRI)による脳内血管病変に相異がみられるかを検討した.その結果,aCL高値を示したものは21例中11例であり,さらに3グループに大別された.その第1群は,臨床・組織学的に典型的な夏季潰瘍の像を呈するが,これに随伴して点状紫斑が一部環状配列をとりながら散在し,紫斑の組織像は毛細血管内フィプリン血栓ないしヒアリン血栓を示す.aCL陽性で以上の像を呈する症例は4例あり,そのうち3例に脳MRI所見で白質内多発性梗塞像が認められた.第2群は,網状皮斑内に限って小さい血痂形成が多発し,その脱落後,有痛性穿窟性潰瘍となり臨床的には壊疽性膿皮症であるが,組織学的に小血管内内皮細胞増殖を示す.aCL陽性で以上の像をとる症例は2例存在し,どちらも脳MRI所見で多発性梗塞像が認められた.第3群は,広汎な拡大中のLivedo racemosa(LRa)で,臨床検査上抗核抗体(ANA)が40から160倍と陽性である.aCL陽性で以上の像を呈した症例は5例あったが,全例脳MRI所見は正常であった.なお,aCL陰性群は10例あり,そのほとんどが四肢末端に限局するLRaであり,aCL陽性群にみられる点状紫斑,ANA,脳MRI所見などの相関関係はみられなかった.以上より,リベド病変の中でも上記3群に合致する臨床・組織像をみた場合,多発性脳血管障害の有無を検索すべきであり,このために血中aCL測定,ANAをはじめとする臨床検査成績の把握は極めて有効な補助診断法であると考えた.
  • 藤澤 裕志, 市川 雅子, 河島 智子, 高瀬 孝子, 馬場 徹, 上野 賢一
    1990 年 100 巻 14 号 p. 1445-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    壊疽性膿皮症と大動脈炎症候群を合併した患者で両疾患の病状の相関を約5年間観察した.皮疹が増悪するときは大動脈炎症候群も進行したが,皮疹のほとんど出現しない時期にも大動脈炎症候群は進行し両疾患の病勢は必ずしも平行しないことが判明した.
  • 中川 浩一, 西村 友宏, 新藤 季佐, 小林 裕美, 濱田 稔夫, 横川 晃治
    1990 年 100 巻 14 号 p. 1453-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    悪性血管内皮細胞腫患者の血液を用いて血漿中エンドセリン―1(ET-1)の濃度を測定した.患者は74歳,女性.初診時,頭部全体に浸潤性の紅斑と腫瘤の形成を認め,病理組織学的に悪性血管内皮細胞腫と診断した.ET-1の血漿中濃度測定はradio-immunoassay(RIA)法を用い,広範囲摘出術の前後,及び再発時に行った.各々の測定値は16.2,4.3,5.6pg/mlであり,何れの測定値も正常範囲(1~1.5pg/ml)以上であり,特に手術前は極めて高値であった.悪性血管内皮細胞腫の病期と血漿中ET-1の濃度が相関する可能性が示唆された.
  • 川島 真, 上村 知子, 山下 浩子, 肥田野 信, 松倉 俊彦
    1990 年 100 巻 14 号 p. 1457-
    発行日: 1990年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    本邦の伝染性軟属腫(MC)患者の皮疹より得られた全DNAの制限酵素Bam HI切断パターンから,MCウイルス(MCV)が4型に分けられることを報告した.うち2型は従来外国例で検出されているMCV-1型,2型と同一であった.他の2型は3種の異なる制限酵素による解析から,従来報告のみられない型と結論され,MCV-3型,4型と命名した.
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