日本皮膚科学会雑誌
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70 巻, 1 号
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  • 児玉 和志
    1960 年 70 巻 1 号 p. 1-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    炎症細胞に関する研究は種々の方法論の導入によつて,種々研究されているが,炎症巣の性格をもつとも端的に表現するのは炎症野における浸潤細胞の構成であり,その際Metschnikoffの古典的な,Mikrophagen,Makrophagen二細胞論は,今日に於ても尚重要な意義を有している.彼が顆粒白血球と対立する性格としてとらえたMakrophagen系は,多くの研究の対象となり,その命名と性格の規定の上に於て,極めて雑多な取扱いを蒙つたが,一通りその生物学的基礎が確立されるに至つたのは,生体染色法を駆使して,系統的に食細胞を体系づけた清野-Aschoffの組織球学説の功績である.但し,組織球学説に於ける血液単球の解釈には不徹底な点があつて,Makrophagen系内に於ける単球・組織球理解上,今日尚くりかえされる所の論争を胚胎した.単球・組織球の異動,相互関係,発生論及び炎症性反応に於ける両者の意義についての現況を綜説することは,本稿の目的とする所でないから省略して,今これらを一括してMakrophagenとよぶと,炎症野の浸潤細胞が主としてMikrophagen型をとるか,Makrophagen型をとるかを決定する因子についての多数の知見がある.まず両者の出現が,起炎体の性格に応じて異ることは周知であるが,その差は,起炎体の正常に関衈する両者の貧食能の相違(Lucke,Mudd,Robertson),両者細胞体構成の差(Clark),あるいは両細胞の有する酵素系の差異(Gleischmann,Rossitter,Wachstein他)に関衈する.起炎体が同一であつても,炎症状態の継続が長びく場合,炎症野にはMakrophagenを増し,条件によつてはその類上皮細胞化がおこる.炎症の経過からみれば,初期の好中球相から慢性期の単核細胞相へ,Menkinのいわゆるstreotypが成立つ.この変換は一面では炎症巣局所の条件,たとえばpHなどの性状の変化にもとづくと共に,他面では生体全体の反応態勢の変化が反映するものと考えられる.(Menkin,Corwin,Ehrich).翻つて,炎症性皮膚疾患はその臨床的表現型に於て極めて多彩である一面,その組織病理学上の所見は類似型であつて,病変の解析には局所及び全身的な機能背景を充分考慮することが必要であると考えられるが,従来までその方面の知見は必ずしも充分でない.細胞内皮系細胞及び所謂単球が,湿疹及び湿疹様疾患にどのように参劃し,又どのような形態を示すかは,これら皮膚疾患に於て,局所的に又全身的にいかなる反応相にあるかを暗示するものと考えられる.著者はリチオンカルミン生体染色を人体皮膚に応用して,カルミン摂取細胞が,湿疹及び湿疹様疾患の真皮浸潤細胞として,どのように分布し,又どのような形態を示すかを検討し,又それらの他の浸潤細胞との関係,炎症の急性型と慢性型とに於けるカルミン摂取細胞の活動の相違などを観察する目的で,以下の実験を試みた.
  • 佐藤 吉昭
    1960 年 70 巻 1 号 p. 20-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    著者はさきに高電圧濾紙電気泳動法より見たる健常人表皮の遊離アミノ酸につき報告したが,引続き健常人の角質,爪について同様に実験を進めたので報告する.
  • 佐藤 吉昭
    1960 年 70 巻 1 号 p. 27-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    著者は第1,2報で健常人の表皮,角質,爪などについて遊離アミノ酸分劃の検討を高電圧濾紙電気泳動法によつて行つたが,今回は病的試料即ち紅皮症及び乾癬患者の鱗屑を対象として実験を行つたので報告する.
  • 鶴見 和弘
    1960 年 70 巻 1 号 p. 32-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    皮疹並びに皮膚病変全体としての性状の形態的現象を能うる限り精密に観察記載し,病変部皮膚を病理組織学的に検査し,その異同によつて疾患の異同を論じ,原因を探し,治療を行うのが皮膚科学の主なる仕事であつた.即ち皮膚科学は形態学的病理学に基礎を置いた記載皮膚科であつた.近年に至り生理学的,生化学的方法をとり入れた新しい病理学の分野の発達と共に,皮膚疾患の病態生理学(生化学)的検索が注目される様になつた.こゝで云う病態生化学的検索とは,皮膚疾患々者の血生化学的検索でなく,主として病変局所皮膚,即ち皮膚代謝の研究は,かなり以前から一部の人により注目されていた.又近年に至りRothman一派の広範な研究があるが,未だ解明されない所が極めて多い現況である.著者は当教室の皮膚代謝に関する研究の一環として皮膚のリボフラビン,ビオチンを家兎及びラッテを用い,環境,性差,成熟による変化,外因との関係について追究し,これら物質の皮膚代謝について若干の基礎的知見を得たので以下に報告したい.
  • 川住 昭夫
    1960 年 70 巻 1 号 p. 64-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    皮疹並びに皮膚病変全体としての性状の形態的現象を能う限り精密に観察記載し,病変部皮膚を病理組織学的に検査し,その異同によつて疾患の異同を論じ,原因を探求して治療をはかるのが従来の皮膚科の主なる仕事であつた.即ち形態学的病理学的に基礎を置いた記載皮膚科学であつた.近年に至り生理学的,生化学的方法を導入せる新しい病理学の分野の発達と共に,皮膚疾患の病態生理学(生化学)的検索が行われる様になつた.こゝで云う病態生化学的検索とは,皮膚疾患々者の血液生化学的検索でなく,主として病変局所皮膚即ち「場」Lesionの生化学的変動の追求を指すことにした.斯る意味での皮膚疾患の病態生化学的研究即ち皮膚代謝の研究はかなり以前から一部の学者に依り注目されていた.又近年に至りRothman一派の広範な研究があるが,未だ解明されない所が極めて多い現況にある.著者は当教室に於ける皮膚代謝に関する研究の一環として,皮膚のビタミンB群,特にニコチン酸及びパントテン酸を家兎,ラッテの生理的或いは外来刺戟並びに内臓諸器官障碍等の病的条件下に於いて,又更に人体の正常値を測定しこれ等の皮膚代謝に就いて基礎的研究を行つたのでこゝに報告する.
  • 斎田 泰彦
    1960 年 70 巻 1 号 p. 84-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    皮疹並びに皮膚病変全体としての性状の形態的現象を能うる限り精密に観察記載し,病変部皮膚を病理組織学的に検査し,その異同によつて疾患の異同を論じ,原因を探し,治療を行うのが皮膚科の主なる仕事であつた.即ち皮膚科学は形態学的病理学的に基礎を置いた記載皮膚科学であつた.近年に至り生理学的,生化学的方法をとり入れた新しい病理学の分野の発達と共に,皮膚疾患の病態生理学(生化学)的検索が注目されるようになつた.ここでいう病態生理学的検索とは,皮膚疾患患者の血生化学的検索でなく,主として病変局所皮膚,即ち場lesionの生化学的変動の追求を指すことにした.斯かる意味での皮膚疾患の病態生化学的研究,即ち皮膚代謝の研究は,かなり以前から1部の人により注目されていた.又近年に至りRothman1派の廣範な研究があるが,未だ解明されない所が極めて多い現況である.著者は当教室における皮膚代謝に関する研究の1環として皮膚の,Cholinesterase(以下ChEと略)活性値を,家兎,ラッテの生理的,或は外来諸刺激並びに内臓諸器官障碍等の病的諸條件下にて測定し,更に人体皮膚の正常値と1部皮膚疾患患者の病巣皮膚のChE活性値を測定し,皮膚酵素の1つであるChEについて若干の知見を得たので,茲に報告する次第である.
  • 阿部 浩次
    1960 年 70 巻 1 号 p. 107-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    今日皮膚疾患の原因にアレルギー性因子が重要な発症素因であることは疑いがない.アレルギー性皮膚疾患の代表である蕁麻疹の治療に往々抗ヒスタミン剤が無條件に連用せられているが,治効の明かなる場合と然らざる場合がある.その他のエネルギー性皮膚疾患についても同様なことが言えると考えられる.また瘙とヒスタミン(以下Hと略記)の関係を論じたものはWineaus&Vagt以来尠くないが,今日迄に皮膚疾患と尿Hの遊離型,結合型の別を調べたものはほとんど見当らない.わたくしは我教室を訪れた各種皮膚疾患約150例について尿HをAnrep法で測定したので,その成績の概要を述べたいと思う.
  • 鈴木 達夫
    1960 年 70 巻 1 号 p. 120-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    瘙は皮膚疼痛と密接な関係を有し,その発生には痛覚の存在を必要とし,且つ以覚痛外の皮膚感覚とは無関係であること,そして痛閾以下の或持続的刺激で痒感が起り得ることは現今殆んど定説と看做される.このことは近年われわれの教室に於ける諸業績を見ても明らかである.しからば,この起痒刺激の受容される場として主役を演ずる所は皮膚の表皮と真皮のいずれであり,またそのいずれの神経であるかはおのずから闡明さるべき重要問題となつてくる.既に古くTorokやKennedyは表皮の欠損せる皮膚局所には瘙は起らず,表皮再生とともにそれが再発してくることを臨床的に認め,更にTorokは実験的に表皮欠損面にJuckpulver(Mucuna pruiensの莢の棘)を作用させても痒感の起らないことや,痒みの強い角化性扁平苔癬の表面をメスまたは電気焼灼により除去すると,表皮の再生までは瘙を感じないことを認め,Winklerも発疱膏による水疱底にJuckpulverを作用させても,また音叉による物理的振動刺激を與えても痒感の生じなかつたことを認め,兩氏ともに瘙発生には表皮の健存することの必要であることを認めたようである.しかし上述の諸家の観察には正確さを欠き,殊にその表皮剥離の種類及び程度とその部の痒覚との関係については不明であり,またその観察に用いられた実験的起痒術式が適当且つ確実であるとは云えない.こゝに於いて著者は1)種々の表皮欠損乃至剥離面上に於いて,予かじめその組織像をよく承知の上で,有力な起痒物質溶液を滴下する方法を用いて該部の痒覚の有無及び痒閾を檢し,2)表皮剥離操作の臨床的瘙への影響を観察し,3)瘙性水疱性疾患の水疱内容の交換瘙試験を行なつて水疱完成時の止痒理由を明らかにし,4)痒感発生に問題となると考えられる表,真皮結合部(基底膜)の真皮側から表皮側へ向つての通過性を実驗組織学的に檢し,痒刺激受容器の問題に関して1見解を有するに至つたのでこゝにその成績を記載する次第である.
  • 伊藤 勇
    1960 年 70 巻 1 号 p. 138-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    表皮の角化は形態学的及び生化学的に,極めて複雑な過程を示すが,角化に関する研究はUnnaの独創的な綜説をはじめとして,種々の観点から行われており,特に近来では電子顕微鏡を駆使しての細胞及び細胞内物質の形態学的な追求,或いは所謂ケラチンの偏光顕微鏡的観察などに加うるに,角層乃至ケラチン中アミノ酸の直接的化学的定量,更には表皮細胞に於ける核酸,グリコーゲン,酵素(酸化酵素,脱水素酵素,エステラーゼ,β-グルクロニダーゼ)などに関する組織化学的檢討が多角的に行われており(Steigleder,Spier,Flesch,Rothman,岩下),角化の本態をこれらの綜合の上に解明しようとする趨勢にある.これら化学的観点にたつ檢索のうち表皮角化現象の1面を示すものとして,表皮細胞蛋白質のSH基の消長及び之とSS結合との関連について,van Scott and P.Flesch,P.Flesch,Rausch et al,Flesch and Satanove等は表皮乃至角質の生物化学的定量法により,又,Montagna et al,Butcher,Spier and Caneghem,Steigleder et al,Foraker and Wingo,Goldblum et al,Mescon and Flesch等は組織科学的方法(主としてBarrnett-Seligman法,Bennet法)により夫々興味ある知見を得ている.しかし,本邦に於てはこの種の檢索は極めて少く,河邊がグラム染色法によつて角化現象を檢討したが,近年でも岩下等の報告に接するに過ぎない.蓋し,人体皮膚の体部位,年令,性による解剖学的差異は夙に記載されている所であるが(江尻,鮫島,Berres),各種角化異常症がb\々一定の好発部位を有することも周知の事実である.依つて私は組織化学的方法に據り角化現象に於ける表皮SH基の態度を追求するに当り,本編では特に健康人皮膚の表皮SH基,SS基分布の部位,年令,及び性別による異同並びにSH基と密接な関連を有する核酸の消長について比較檢討を試みた.
  • 高橋 章
    1960 年 70 巻 1 号 p. 154-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
    皮膚の臨床的機能乃至はその組織形態が,摂取脂質の如何に依つて,どの様な影響を受けるかと云う事は,栄養学的たも又皮膚科学的にも極めて興味のある問題である.この点に関するこれまでの研究は,主としてBurr等に依つて展開され,更にSinclairその他に依つてその知見が拡大されて来た.即ち主として,所謂必須脂肪酸の生理的又は臨床的意義に関する検討である.本邦に於ては,染川が,鯨油の系統的研究を行つた際に,これを白鼠に投与して,その臨床的症状に就て報告している.その他,スクアレン,Vit.A等の皮膚機能に及びす影響,或は組織形態に及ぼす変化等に関しても若干の報告を見る事が出来る.併し乍ら,皮膚と各種脂質乃至は脂肪酸との関係に就ては,依然不明の点が多いのである.私は,今回主として,2,3混合脂質として,大豆油,抹香鯨油.槌鯨油,スクアランを,更に,各種単一脂肪酸としてのステアリン酸,パルミチン酸,リノール酸,オレイン酸の種々の混合比からなる合成脂質を,夫々実験動物に投与し,その皮膚の臨床的変化,及びその組織学的変化に就て検討を加えると共に,又一方,脂質欠乏食餌を投与して,同様検討を行つた.
  • 1960 年 70 巻 1 号 p. 1e-
    発行日: 1960年
    公開日: 2014/08/29
    ジャーナル 認証あり
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