コリン性蕁麻疹は,アセチルコリン(Ach)によって誘導されるためにこの疾患名がついている.恐らく我国に多い疾患である.コリン性蕁麻疹性には減汗(無汗,低汗)を伴うことがあり,減汗性コリン性蕁麻疹と呼んでいる.診断のポイントは,発汗を促す刺激による点状膨疹と痛みの出現である.そのメカニズムに関して,Achの直接作用によって肥満細胞が脱顆粒し膨疹を生じる機序と,Achによって発汗が促され,汗管閉塞などにより汗が真皮に漏れ出し,汗アレルギーによって膨疹が形成される間接機序とが考えられる.前者の代表が,減汗性コリン性蕁麻疹であり,エクリン汗腺上皮細胞のAch受容体発現が低下しているために減汗となり,かつ行き場を失ったAchが周囲の肥満細胞に働き,脱顆粒を誘導するものと考えられる.減汗性コリン性蕁麻疹に最も有効な治療はステロイドパルス療法である.
すべての治療における診療と同様に,多汗症の治療においても治療者側の引き出しを複数用意しておくことがコツとなる.初診時の治療計画,治療の正しい伝え方について,発汗部位別にバーチャル症例を挙げて提示した.さらに保存的に治療困難である場合は胸部交感神経遮断術など外科的加療の適応になるが,不可逆的な方法であり,合併症も伴う胸部交感神経遮断術の正しい知識を持った上で適切なタイミングで適切な症例を紹介することが望まれる.
無汗症とは自律神経で制御される温熱性発汗の不全状態をいう.代表疾患は特発性後天性全身性無汗症で,無汗に伴ううつ熱症状を主訴に受診することが多い.自己免疫機序の関与等が推察されるが疾患としての単一性も未確立で不明な点が多い一方,減汗性コリン性蕁麻疹との類似性があり病態理解の観点から興味深い.その他あまりなじみのない先天性無汗症や続発性無汗症,髄節性/分節性の無汗症があり,神経学的理解も必要である.
進行期悪性黒色腫の新規治療は非常に高額で医療費の増大を招く可能性がある.悪性黒色腫患者に医療費に関するアンケート調査をして治療別に比較した.2015年度上半期の診療実績を前年度と比較し,新規治療施行例の薬剤費を概算した.新規治療群は医療費が生活費の20%以上で負担感が強かった.外来の診療用請求額,診療単価,医療費率が増加し,新規治療が要因の一つと考えた.新規治療症例の薬剤費は高額であった.新規治療による患者の経済的負担,病院の経営的側面,国民医療費の問題を理解し,医療経済面に配慮する必要がある.
2001年1月~2014年10月までに当科を受診した酒皶様皮膚炎患者に対し,パッチテストを施行した71例を検討した.男性1例,女性70例,年齢の中央値は52歳であった.約4割の症例が接触皮膚炎を疑われていたがパッチテストは未施行であった.パッチテストの結果,7割(52例)をアレルギー性接触皮膚炎と診断した.そのうち32例は化粧品が原因であった.酒皶様皮膚炎の背景には接触皮膚炎が多く存在し,原因究明および治療にパッチテストが有用であることが示唆された.