補体成分が関連する疾患というと,易感染性や自己免疫疾患を想像するかもしれないが,最近,補体が原因で発症する皮膚症状を伴う疾患が注目されている.本稿では,最近,明らかになった補体関連皮膚疾患として,繰り返す蕁麻疹・無菌性髄膜炎などの自己炎症を伴う発作性夜間ヘモグロビン尿症と,腎糸球体に抗体の沈着を伴わない補体が沈着するC3腎症と同様にC3の沈着を認める顆粒状C3皮膚症の分子病態の可能性について紹介したい.
化膿性汗腺炎は,腋窩・臀部・鼠径部などの間擦部を中心に炎症性結節や囊腫,排膿,瘢痕,瘻孔を繰り返す難治性皮膚疾患であり,かつて本邦では慢性膿皮症と呼称されていた.診断には,好発部位での皮疹出現と慢性再発性の経過が重要であるが,未だ本症についての医師の疾患理解は十分とは言えず,診断と治療の遅れが本症の難治例の多さに繋がっている可能性がある.本症は,かつてはアポクリン汗腺を主座とする細菌感染症のひとつと考えられていたが,2010年に一部の患者にγセクレターゼをコードする遺伝子群(NCSTN,PSENEN,PSEN1)に機能喪失変異を持つことが発見されてからその病態理解が進み,現在は毛包を主座とする自己炎症性疾患と考えられている.化膿性汗腺炎に対しては,以前は抗生剤の内服と外用,外科的治療が行われていたが,2019年にアダリムマブが使用可能になり治療成績が向上している.今後,さらに治療が多角化していくことが予想されるが,皮膚科医が本症の疾患概念や病態を正しく理解することで治療新時代にうまく適応し,本症の治療成績が向上することを強く期待している.
自己炎症性発症機序を有する一連の炎症性角化症を包括する概念が,自己炎症性角化症(autoinflammatory keratinization diseases;AiKD)である.AiKDの代表的疾患である,CARD14の機能獲得バリアントやIL36RNの機能喪失変異を発症因子として有する汎発性膿疱性乾癬は,近年,自己炎症性の側面がより明確になってきている.また,proteasome maturation proteinをコードするPOMP変異により引き起こされるKLICK症候群は,プロテアソーム関連AiKDと考えられる.AiKDに含まれる疾患も増えており,この概念で各疾患を捉えることは,病態機序の正確な理解を可能とし,精密医療へと繋がる.
当院医療従事者を対象に1,2回目に続き3回目の新型コロナワクチン接種を行い,各々に出現した局所,全身副反応に関するアンケートを用いて副反応を検討した.全体として局所副反応出現率は3回目で有意に上昇したが,全身副反応は有意な上昇はなかった.全身副反応が出現しやすい要因は女性,アレルギー既往あり,60歳未満で1,2回目と同じ結果であった.60歳以上群における解析では,3回目の副反応出現率につき,局所副反応は2回目,全身副反応は1,2回目に比べ,有意な上昇を認めた.3回目において皮膚・粘膜症状を認めた症例は必ずしも1,2回目に同症状を認めていなかった.
円形脱毛症は,外見上の印象を大きく左右し心理社会的・感情的苦痛を伴う疾患である.しかし,現在の治療は主に頭部の脱毛への対症療法であり,本邦では脱毛改善に伴う疾病負担の軽減を評価した報告は数少ない.本稿では,円形脱毛症患者の疾病負担を理解するため,これまでにそれがどのように評価されてきたかをまとめた.医師による客観的な症状評価に加え,患者による主観的な疾病負担の評価も取り入れた多角的な評価方法が広く用いられることにより,円形脱毛症患者が抱える負担への理解が深まると考えられる.