深在性皮膚真菌症は近年増加し様々な菌と多彩な病型が報告されてきた.しかし大事なことは,まず診断で真菌感染症の疑いを持つことであり,やるべきことは①鏡検,②生検,③培養,④病理組織標本のPAS,Grocott染色で詳細に組織を検討することの4つである.組織に真菌を証明したが培養できなかった場合に緩衝ホルマリン固定された標本からの分子生物学的検討を行う.
皮膚マイクロバイオームの中で主要な真菌は好脂性のマラセチア(Malassezia)である.本菌は脂漏性皮膚炎,癜風,マラセチア毛包炎,アトピー性皮膚炎の原因あるいは増悪因子となることがある.その発症機序として,脂漏性皮膚炎ではマラセチアが産生するリパーゼが皮脂を分解し,その分解産物である脂肪酸(特にオレイン酸)が炎症を惹起する.また,マラセチアはトリプトファンから“Malassezin”という化合物を非酵素的に産生するが,これはアリール炭化水素受容体(aryl hydrocarbon receptor,AhR)のリガンドとして働くことから,AhRを介した炎症を引き起こしている可能性も考えられる.本稿では,マラセチア関連皮膚疾患の中でも脂漏性皮膚炎患者皮膚のマイクロバイオームとマラセチアの本症への関与に関する知見を述べた.
皮脂欠乏症に対する認識とその治療実態を把握するために,皮膚科,小児科を始め複数の診療科の医師1,088名にアンケートを実施した.その結果,臨床現場では,皮膚科医に限らず広い領域の診療科の医師は,多くの疾患や状態が皮脂欠乏症をきたしうることを認識しており,その皮脂欠乏症は治療が必要で,医療用保湿剤が重要であると考えている.一方で多くの医師は軽症の場合には医療費も意識してセルフメディケーションを活用することや,美容目的には処方しないようにしているなど,保険診療の枠組みも意識していることが明らかになった.
乾癬治療における生物学的製剤使用時の結核スクリーニングの現状について西日本の18施設を調査した.事前の検査ではinterferon gamma release assay(IGRA)が全施設で行われ,画像検査はCTが15施設,胸部レントゲンが3施設であった.フォローアップでは検査の結果や画像所見により頻度が異なっていた.全患者1,117例のうち,IGRA陽性で抗結核薬を投与されていた例は64例,IGRA陰性で抗結核薬を投与されていた例は103例であり,副作用を認めた患者は23例15%であった.これらの適切な検査と治療により,結核の発生頻度が低く抑えられていると考えられた.
8カ月,女児.出生時より脊髄脂肪髄膜瘤あり,その手術時に会陰から肛門付近の紅斑を指摘され当科受診.オムツ皮膚炎を考え外用治療するも紅斑は拡大し,次第に膨隆して局面を形成したため乳児血管腫を考えた.紅斑部は病理組織学的検査で真皮浅層に小血管が増生し,glucose transporter-1(GLUT-1)免疫染色陽性.脊髄脂肪髄膜瘤を合併していることよりPELVIS症候群と診断した.生後20カ月時,他臓器奇形の合併はない.PELVIS症候群でみられる乳児血管腫は会陰部に好発することから,初期にはオムツ皮膚炎と鑑別が難しい.会陰部の乳児血管腫を認めた際は合併奇形に留意する必要がある.
2020年11月下旬,当院で患者計181人が感染する事態となるCOVID-19クラスターが発生した.うち,皮疹が出現したのは4人だった.全例が何らかの基礎疾患を有しており,中等症以上のCOVID-19肺炎を発症した.皮疹は肺炎に対するステロイド治療の終了や減量に伴って出現しやすい傾向があり,体幹部に多く,性状は一部網状を呈する,紅斑性皮疹あるいは蕁麻疹だった.COVID-19関連皮疹は患者の基礎疾患に起因する皮疹や薬疹などとの鑑別が重要だが,その鑑別は時に困難である.