光線療法はほぼ皮膚科ならではの治療法である.したがって,皮膚科医には光線療法を上手に活用して様々な皮膚疾患の治療を行うことが求められる.本邦における光線療法は,311~312 nm付近に鋭いピークを持つnarrowband UVBと308 nmをピーク波長とするターゲット型エキシマライトが現在中心になっている.本セミナリウムでは光線(紫外線)療法に関する基本事項を解説し,実際の日常診療におけるnarrowband UVBとエキシマライトでの治療例を紹介した.
現在紫外線治療では8つの疾患が保険収載されている.それらの疾患に対する有効性については今さら論じないが一方,安全性については紅斑になる,あるいは発がんのリスクがあるということは概念的には認識されている程度である.今回は紫外線によるDNA損傷波長スペクトラム等を始点として現在まで紅斑,発がんを起こす具体的なスペクトラムを理解し,その2つの要素の関連性などを解説する.
生物学的製剤は乾癬に有効な場合が多いが,長期投与に伴う効果減弱が問題となることがある.一方,顆粒球単球吸着除去療法(GMA)は副作用が少なく安全性が高い治療と考えられており,生物学的製剤とも併用可能とされる.今回,2例の汎発性膿疱性乾癬(GPP)に対しinfliximab,brodalumabの効果減弱時にGMAを併用し症状が軽快,同じ生物学的製剤を継続,寛解を維持できた.GMAと生物学的製剤の併用による重篤な有害事象の報告はごく少数であり,生物学的製剤が効果減弱した際の選択肢になると思われた.
β遮断薬は,血管内皮細胞の増生・遊走を抑制し,乳児血管腫に腫瘍縮小効果がある.頭部血管肉腫においても,腫瘍再発抑制効果が報告されている.当院にて2009年4月~2019年3月に初期治療として化学放射線療法を選択したT2N0M0 stage IIの頭部血管肉腫8症例に対して後方視的コホート研究を行った.β遮断薬を併用していた症例が4例あり,生存期間や無遠隔転移生存期間が延長する傾向にあり,腫瘍再発抑制効果を介して治療成績の向上に寄与する可能性が示唆された.
26歳,男性.右下腹部の約7 mm大の黒褐色斑.ダーモスコピーでは周辺部は褐色のregular pigment network,中央部は黒褐色homogeneous,blue white veil.病理組織は表皮基底層に少数の個別性・胞巣性のメラノサイトが存在し,ごく一部では軽度の異型がみられる.病変の真皮では高度なlamellar fibrosis内にメラノサイトの胞巣が多発する.メラノサイトのmaturationや個別化は見られない.高度な線維化を起こした真皮内にメラノサイトの胞巣が増生するという特異な組織像からSclerosing nevusと診断した.本邦ではあまり知られていない病態なので,症例提示とその疾患概念を報告した.