IgG4関連疾患は皮膚にも病変を来しうる.他の臓器のIgG4関連疾患と異なり,皮膚病変は種々の臨床像を呈す.IgG4陽性形質細胞の直接浸潤による限局性腫瘤・腫脹,丘疹・結節,びまん性浸潤性・肥厚性病変が原発疹である.形質細胞やIgG4により二次的に形成される皮疹は続発疹であり,Th2やTh17も病変形成に関与する可能性がある.
IgG4関連皮膚疾患(IgG4-related skin disease)は丘疹,結節,腫瘤を呈し,組織学的に形質細胞浸潤,リンパ球・好酸球浸潤,リンパ濾胞形成がみられる.しかし,これらの所見は他の皮膚疾患でも観察されること,IgG4関連皮膚疾患の診断基準が確立していないことから,しばしば他疾患との異同が議論になる.その代表的なものに偽リンパ腫と木村病がある.どちらもIgG4関連皮膚疾患と同様,頭頸部領域に好発し,共通する臨床的・組織学的特徴を有する.これまでの報告を再検討すると,偽リンパ腫あるいは木村病と診断された症例の一部はIgG4関連皮膚疾患であった可能性がある.偽リンパ腫,木村病と診断する際には,IgG4関連皮膚疾患を鑑別するため,他臓器病変の有無,血清IgG4濃度の測定,組織中のIgG4陽性形質細胞の有無など,多方面から検討することが望まれる.
脱毛斑を示すIgG4関連皮膚疾患はまれであり,自験例を含め2報告例がある.IgG4関連疾患ではCD4陽性Tc細胞等が成立に寄与している.円形脱毛症ではCD8陽性Tc細胞等の毛包周囲・毛包内浸潤がみられる.我々の検討では,自験例のIgG4関連疾患の脱毛斑でCD4陽性細胞の毛包周囲・毛包内浸潤を,検討した円形脱毛症5例中3例でIgG4陽性細胞の病変部での浸潤を見いだした.同じ脱毛斑を呈するのに,IgG4陽性細胞の浸潤と炎症細胞の毛包内浸潤が何らかの役割を果たしている可能性が考えられた.
60歳,女性.右後頭部の青色斑内に黒色ドーム状結節と赤色扁平結節を認めた.赤色結節では真皮全層~皮下にメラニンを含有しない大型の異型細胞が増殖しており,免疫組織染色で腫瘍細胞はHMB-45,Melan-A陽性であった.一方,黒色結節では真皮全層性にメラニン顆粒を多量に含有する異形の乏しい細胞が密に増殖していた.以上より,cellular blue nevusに生じたamelanoticな結節を呈するmalignant blue nevusと診断した.術後2年で肺,骨に多発転移を生じ死亡した.
25歳女性.全身の紅斑と腫脹,発熱を主訴に受診.対症療法で改善するも微熱が持続し,1カ月後皮膚症状も再燃した.子宮内膜症のために連日内服していた合成プロゲステロンによる薬疹を疑い中止したが,月経数日前より再燃し数日で軽快することを繰り返した.皮内テストでプロゲステロン陽性,エストロゲン陰性でありautoimmune progesterone dermatitisと診断した.医原性に生じた可能性が考えられ,低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤内服に変更後症状のコントロールを得た.