病理組織学的な変化を客観的に定量化することは,診断および治療効果の判定に極めて有用性が高いと思われる.そこで,モルフォメトリー法を用いて全身性強皮症(PSS)患者の前腕伸側部皮膚の病理組織所見の定量化を試みた.PSS患者34例[前腕伸側部に皮膚硬化を伴うBarnettⅡ・Ⅲ型群(A群と略):19例と前腕伸側部に皮膚硬化を伴わないBarnettⅠ型群(B群):15例]と前腕伸側部より皮膚生検した健常人20例の病理組織標本を対象とした.方法はグリッドガラス板,(一辺が10mmの正方形を10×10個含む)を顕微鏡の接眼レンズ下に挿入し,グリッドの4番目の線を表皮突起先端に合わせて,目的とする組織成分,①角質層,②角質層以外の表皮,③間質(真皮内の膠原線維,皮膚附属器および血管,リンパ管,浸潤細胞,皮下脂肪組織を除いた成分),④膠原線維,⑤皮膚附属器(血管,浸潤細胞,皮下脂肪組織を含む)および⑥その他の項目(角質層上部の空間部分)上のグリッドの交点を数えて定量化した.その結果,健常人群では②は3.4±2.0%,③は16.0±5.7%,④は35.9±11.4%,⑤は2.8±2.6%であった.一方,PSSのA群の膠原線維は48.5±6.5%,B群では41.6±11.5%となり,健常人群(35.9±11.4%)に比べ有意に増加していた(p<0.01).間質はA,B両群が健常人群に比べ減少していた(p<0.05).②は,A群で5.2±3.3%,B群で4.6±2.2%となり,健常人群の3.4%±2.0%に比べ有意に増加していた(p<0.05).さらにPSSの病期別(浮腫期:4例,硬化期:9例,委縮期:25例)に膠原線維および間質の体積(%)について比較・検討した結果,膠原線維においては浮腫期は健常人群に比べ有意に増加し,浮腫期と硬化期は委縮期より有意に増加し,病期別の膠原線維の量的変化が客観的に評価できた.以上の結果から,モルフォメトリー法はPSSの膠原線維および間質の体積(%)を数量化することで,健常人群と比較検討できること,さらには病期別の対比が可能であることが分かった.
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