乾癬治療薬の皮膚細胞に対する作用を明らかにするために,われわれは正常ヒト表皮角化細胞(NHK),真皮線維芽細胞(HDF)の増殖とそれらの細胞が産生するサイトカインに対する影響を検討した.乾癬治療薬として,corticosteroids〔hydrocortisone(HC),dexamethasone(Dex)〕,VitaminD3誘導体〔1,25dihydroxyvitamin D3(1,25(OH)2D3),MC903〕,合成retinoids〔etretinate(Etret),Am-80〕,cyclosporin A(CsA)を対象とした.細胞増殖の検討はMTT法,サイトカインについてはinterleukin(IL)-6,IL-8をELISAにより測定した.Dex,CsA,1,25(OH)2D3,MC903は10-8~10-6M濃度範囲においてNHKの増殖を濃度依存性に抑制した.その10-6M濃度における増殖抑制率はDexとCsAが約50%,1,25(OH)2D3とMC903が約30%であった.また,10-6M濃度の1,25(OH)2D3とMC903はHDFの増殖を約30%抑制したが,DexとCsAはHDFの増殖には影響しなかった.一方,EtretはNHKの増殖に対して軽度の促進傾向を示した.サイトカインの産生に対する影響において,DexはIL-1α刺激NHKとHDFによるIL-8産生を著明に抑制し,さらにHDF産生のIL-6を有意に抑制した.CsAはIL-1αおよびphorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)刺激によるNHKのIL-8産生を抑制した.1,25(OH)2D3とMC903はPMA刺激によるNHK産生のIL-8,IL-1α刺激によるHDF産生のIL-8をそれぞれ抑制した.一方,EtretはPMA刺激によるNHKのIL-8産生を抑制したが,IL-1α刺激に対する調節効果はほどんど認められなかった.以上の結果から,皮膚細胞の増殖とサイトカイン産生に対して乾癬治療薬はそれぞれ特徴的な調節作用を有することが示唆された.
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