近時皮膚科領域においても副腎皮質ホルモン(以下corticoidと略)の臨床への応用は著しいものがあり,今や名実とも皮膚科治療界の王座を占めているが,本剤はもちろんmorbidistatic な治療剤であつて,休療すれば,病因の残存する限り再燃は免れない.勢い長期投与する機会が多くなる.殊に最近の製剤は塩類代謝性の副作用が殆んど影をひそめ,大半が糖質代謝性に由来する副作用となり,かなり病勢が進展するまで無症状に経過するため,ややもすると必要以上に適応が拡大され,投与量,期間ともに拡大,延長する傾向にあり,今や副作用の防止対策は本療法にとり最も重要な問題となつて来た.ここに取りあげた間歇投与はLange et al.が提唱してより,下垂体副腎系の機能低下を始め,諸種副症状を防止する優れた術式として,内科,小児科領域では多数の臨床研究が試みられ,すでに一部の疾患にはルチンの術式として使用されているが,皮膚皮科領域では本法に関する研究は意外に少なく,わずかにWitten&Sulzberger,Reichling他数氏の臨床報告をみるに過ぎない.殊に臨床的応用はなお微々たるもので,昨春著者が全国主要病院67施設を対象に調査した成績では,わずか,15施設から使用しているという回答を受けた.その内訳は単に間歇投与と記載あるもの6,その他隔日投与法4,1週間法4,1箇月法1で,1,2の施設を除くと未だ積極的に実施しているとは思われない.しかしながら著者らがかつて試みた小観察によると,下垂体副腎系の萎縮は予想タトの良果が得られ,さらにまた従来の投与法の最も大きな欠陥とされているcorticoidの離脱に際しても,充分利用価値があるやに推断され,長期投与を実施する場合の副作用の防止策として,現行中最も優れた方法の如く推察された.ただ本法は数日間の休薬により甚だ高率に再燃が起こり,特定の皮膚疾患を除くと休薬可能の範囲はせいぜい一両日,またその条件は症例毎にまちまちで,到底Langeらのいう1週間法を規則正しく実施することは不可能と考えられた.すなわち皮膚科領域における間歇投与はこれまでの諸家の報告とは別個の立場から再検討する必要があるやに推察される.本研究はかかる理由で,広く慢性皮膚疾患への応用を企図,主として術式の検討と,下垂体副腎系への影響を中心に,臨床的並びに実験的研究を行なつた.
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