四肢に扁平疣贅様病変を有する14例について臨床,組織,免疫組織化学および分子生物学的に検討した.臨床的に個疹の性状から分類すると,扁平疣贅と診断しえた3例,淡紅褐色調の軽度角化を伴う扁平丘疹で扁平苔癬との鑑別を要した3例,老人性疣贅との鑑別を要した4例,辺縁不整やや大型の淡褐色調扁平丘疹で老人性色素斑との鑑別を要した4例の4グループに分けられた.扁平疣贅を生じるヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の組織学的細胞変性効果(CPE)とされている空胞化細胞,いわゆるbird's eyeを,扁平疣贅と考えた3例と扁平苔癬と鑑別を要した3例の計6例に認め,うち4例には角層のbasket-weave appearanceも認めた.免疫組織化学的に,この6例では空胞化細胞の核に一致してHPV抗原陽性所見がみられた.さらに,生検材料より全細胞DNAを抽出しHPV3型DNAプローブを用いたblot hybridization法でHPV DNAの検出を行い,CPE,HPV抗原陽性の6例と,いずれも陰性1例の計7例でその存在が確認された.そのタイプはHPV3型のvariant 3例,HPV28型のvariant 2例である可能性が強く示唆され,残り2例はHPV 3型の亜型あるいは新しい型と思われた.以上より,四肢に生じた扁平疣贅も通常の扁平疣贅を生じるHPV 3,10,28型とある程度の相同性を有する型が関与していることが明らかになった.また組織学,免疫組織化学的検討は扁平疣贅の診断に有用であったが,1例ではCPE,HPV抗原ともに陰性であったにもかかわらず,分子生物学的にHPV DNAの存在を確認しえたことから,ウイルス粒子の産生が少なく組織学,免疫組織化学的にHPVの存在の確認が不可能な例では最終的な診断には分子生物学的検討が必要な場合もあると思われた.
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