日本皮膚科学会雑誌
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120 巻, 6 号
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皮膚科セミナリウム 第61回 薬疹
  • 塩原 哲夫
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第61回 薬疹
    2010 年 120 巻 6 号 p. 1157-1163
    発行日: 2010/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    典型的な臨床像を呈する固定薬疹の診断は容易である.しかし,非典型的な臨床像を呈する特殊型(例えば非色素沈着型や慢性型)の診断は容易ではない.固定薬疹は原因薬剤以外の様々な刺激によっても誘発されるが,その事実を知らないとこれらの非典型的固定薬疹を見逃すことになる.固定薬疹における表皮傷害は病変部基底層に常在するCD8+T細胞の活性化によりもたらされるが,この細胞は一方で組織構築を病原体から守る機能も有している.
  • 上出 良一
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第61回 薬疹
    2010 年 120 巻 6 号 p. 1165-1170
    発行日: 2010/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    光線過敏症を発現する薬剤は時代と共に変遷する.古くからサルファ剤,フェノチアジン系向精神薬,チアジド系降圧利尿薬,スルフォニル尿素系経口糖尿病薬,グリセオフルビンなどが知られていた.その後,ピロキシカムやアンピロキシカムによるものが多発し,最近ではニューキノロン系抗菌薬によるものが記憶に新しい.ケトプロフェン外用薬による光アレルギー性接触皮膚炎も多発している.ごく最近,血圧降下薬の合剤中のヒドロクロロチアジドによる例が増えており,また,新発売の肺線維症治療薬であるピルフェニドンは半数以上で光線過敏症が生じる.
  • 大野 貴司
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第61回 薬疹
    2010 年 120 巻 6 号 p. 1171-1178
    発行日: 2010/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    重症薬疹の症状,診断基準,治療法について概説した.SJS/TENでは重篤な眼症状などの後遺症を残す可能性があり,早期の診断と適切な治療,局所処置が重要である.DISHでは,経過中に症状が再燃する場合があり,ステロイド薬の減量にも注意が必要である.
原著
  • 菊池 孝幸, 小林 研, 赤坂 俊英
    原稿種別: 原著
    2010 年 120 巻 6 号 p. 1179-1186
    発行日: 2010/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    マイマイガはドクガ科の1種で日本はもとより北半球に広く分布している.時に大発生することがあり,森林害虫としてよく知られている.その1齢幼虫は毒針毛を持ち皮膚炎の原因となるが,その報告は少なく,本邦においては,マイマイガ幼虫による毛虫皮膚炎が集団発生したという報告はない.著者らは2008年5~6月に岩手県葛巻町で大発生したマイマイガの幼虫が原因と考えられる毛虫皮膚炎患者を58例経験した.皮疹は瘙痒のある紅斑性丘疹,または小水疱が主に頸部や上肢などの露出部に認められた.葛巻町民を対象に実施したアンケート調査では,同時期,926名に毛虫皮膚炎と思われる症状が認められたことが判明した.今回の経験を通じて,マイマイガの1齢幼虫が毛虫皮膚炎の原因となることが広く周知されるべきだと考えた.
  • 美浦 麻衣子, 西村 景子, 古田 加奈子, 鈴木 加余子, 小山 勝志, 永井 美貴, 青山 裕美, 北島 康雄, 松永 佳世子
    原稿種別: 原著
    2010 年 120 巻 6 号 p. 1187-1195
    発行日: 2010/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    67歳女性.既往歴:9年前より強皮症.現病歴:初診1年前から口内炎が出現し口腔外科で治療中,1カ月前から口内炎症状が悪化し,2週間前に臀部に痒みを伴う皮疹が出現したため当科を受診.初診時陰部から肛門周囲にかけて,周囲が堤防状に隆起する肥厚した灰白色の局面を認めた.皮疹部の皮膚生検組織では表皮内に好酸球性膿疱を認め,蛍光抗体直接法で表皮細胞間にIgGとC3の沈着を認めたことより,増殖性天疱瘡と診断.抗デスモグレイン3抗体は最高14,433.3(index value)と著明に高値であった.二重膜濾過血漿交換(DFPP)及びシクロホスファミドパルス,低用量のステロイド剤投与によって皮疹は軽快し,抗デスモグレイン3抗体価は低下した.1回の入院日数は7~8日間であった.維持療法としてステロイド剤に加えてタクロリムスを用いた.尋常性天疱瘡において抗体価が著明に高値である症例や,ステロイド剤大量投与が困難である症例,さらに長期入院の困難な症例において,本例に施行したDFPP及びシクロホスファミド,ステロイド剤,タクロリムス併用療法は考慮すべき治療法の1つと考えた.
  • 新井 達, 楠 舞, 桑原 慎治, 谷口 友則, 森田 美穂, 江藤 宏光, 三井 純雪, 勝岡 憲生
    原稿種別: 原著
    2010 年 120 巻 6 号 p. 1197-1202
    発行日: 2010/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    1971年8月から2007年12月までの36年間に当科を受診した16歳以上の皮膚筋炎患者174例のなかで,悪性腫瘍合併例(50例中原発巣が明らかな48例)の臨床的特徴について検討した.①癌種としては胃癌(13例),肺癌(10例),悪性リンパ腫(6例)の順に多くみられた.②それ以外の癌種として,女性では乳癌,卵巣癌(各5例)などの女性生殖器系の癌が多かった.③便宜的に皮膚筋炎と癌の時間的関連を癌先行群,同時発症群,皮膚筋炎先行群の3群に分けて検討したところ,癌先行群では乳癌や卵巣癌(各4例)が多く,同時発症群では胃癌(9例)が,皮膚筋炎先行群では後に肺癌のみいだされる症例(4例)が多い傾向にあった.④癌合併群にみられる特徴的な皮膚症状のひとつは顔面の紅斑で,ヘリオトロープ紅斑も癌合併群に多い傾向にあったが,統計学的有意差はなかった.⑤紅斑と共に水疱を認めた8例は全例が悪性腫瘍を合併していた.⑥筋症状の有無に関しては癌合併と非合併群との間に有意な差はみられなかった.しかし癌合併群では,筋症状は治療抵抗性の傾向にあり,かつ自他覚的筋力低下の遷延する症例が目立った.⑦悪性腫瘍と間質性肺炎の両者を合併した症例が8例(16.7%)あったが,癌の病勢とは相関しなかった.
  • 松永 るり, 村上 富美子, 溝口 昌子, 相馬 良直
    原稿種別: 原著
    2010 年 120 巻 6 号 p. 1203-1208
    発行日: 2010/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    成人アトピー性皮膚炎患者108名を対象として頸部網状色素沈着の有無を調査した.頸部網状色素沈着を持つ者は26名(24.1%)であった.色素沈着合併群と非合併群を比較したところ,アトピー性皮膚炎の発症年齢,罹病期間に有意差はなかったが,皮疹の重症度と血清IgE値が色素沈着合併群で有意に高かった.喘息の合併は色素沈着合併群で有意に多かったが,アレルギー性鼻炎の合併率には有意な差はなかった.以上より頸部網状色素沈着の発症には,罹病期間の長さよりも皮疹の重症度がより強く関係していると思われた.皮膚の病理組織では真皮上層にメラニンの滴落像と血管周囲性炎症性細胞浸潤がみられ,従来の報告と同様であった.頸部網状色素沈着の治療として10例にQ-スイッチルビーレーザー照射を行い,全例に有効であった.最長で2年10カ月の経過観察期間中に色素沈着が再燃した例はなかった.レーザー治療は効果が確実で効果発現までの時間が短いという利点があるが,非照射部との色調差が目立ってしまうなどの問題点もあるため,頸部網状色素沈着の治療として第一選択となる治療ではない.まず皮膚炎を沈静化させるための標準治療を行い,それでもなお比較的小範囲に強い色素沈着が残存するような症例が適応となると思われた.
  • 百瀬 葉子, 新井 達, 新井 春枝, 勝岡 憲生, 田中 住明, 橋本 篤
    原稿種別: 原著
    2010 年 120 巻 6 号 p. 1209-1216
    発行日: 2010/05/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    全身性エリテマトーデス(SLE)の皮膚病変の病理組織学的所見の特徴については周知である.その中で新たなものとして,新井は膠原線維の変性と組織球の浸潤に着目し,膠原線維アタック型反応と命名した1).今回同様の組織反応を認めた8症例の臨床的特徴について検討した結果,以下の共通した特徴が認められた.①発熱とともに境界不明瞭な浸潤を伴う滲出性の紅斑が出現し,2週間程度で消退する.②SLEに特異的な検査値の変動は乏しく,白血球数,CRPおよびLDHなどの上昇がみられる.③結節性紅斑,滲出性紅斑あるいは好中球性紅斑に類似する臨床と経過を示す.同様の反応はSLE以外にシェーグレン症候群(SJS)や混合性結合組織病(MCTD)などにおいてもその経過中に出現することがある.
学会抄録
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