日本皮膚科学会雑誌
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115 巻, 14 号
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皮膚科セミナリウム 第9回 痒み―基礎と臨床(2)
原著
  • 奥田 知規, 加藤 幸子, 瀬野 晋一郎, 秋元 恵実, 小林 博子, 渡辺 篤志, 大井 綱郎, 嶋津 秀昭
    原稿種別: 原著
    2005 年 115 巻 14 号 p. 2373-2380
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    帯状疱疹は日常診療において比較的よくみられる疾患である.近年,優秀な抗ウイルス薬が開発され,確実な診断がつけば治療は画一化されている.ただし,その疼痛のコントロールおよび評価はいまだ不十分である.現在,痛みの程度を客観的に評価する手段として主に用いられているのが,視覚的アナログ目盛法(visual analogue scale:VAS)である.この方法は簡便であり,痛みの評価の標準ともいえる方法である.しかし,VASは患者自身の主観的な評価であることから,個人差も大きくその定量的な分析は容易ではない.このような観点から,我々は,痛みの定量的な評価を目的とした痛み定量計測システムを開発した.この機器を用いて急性期帯状疱疹患者の治療前後の痛みを客観的に評価(痛み指数あるいは痛み度)すると同時に,従来の主観的評価法であるVASとの比較検討を行った.対象は年齢が18歳~84歳,男24名,女22名,計46名の帯状疱疹患者である.この結果,いずれの測定においても治療の効果が明らかな場合,痛み指数あるいは痛み度は,痛みが軽減されることを示す値に変化した.しかし,個々の症例で検討してみると,VASが増加しているのにも関わらず,痛み指数が減少している例,もしくはその逆も認められる症例も見受けられた.これらの患者を個別に分析した結果,VASはかなり心理的な要素が強く,実際の痛みを評価するだけでなく,そのときの患者の心理状態や不満などを含んでいることが理解された.このように両者は全体としては相関性を有するが,個別には相関をもたない例を含むことも明らかであった.従って,痛み指数とVASとの比較では,痛み指数が客観的な痛みの大きさを表現するのに対し,VASは患者の心理的な影響を大きく含む,主観的な痛みの評価方法であることが示唆された.以上のことより,本システムを用いての痛み評価は,痛みの量を客観的に定量評価することができ,十分に実用可能であることが確認された.
  • 赤座 誠文, 小島 肇夫, 石井 泉, 中田 悟, 小西 宏明, 赤松 浩彦, 西嶋 攝子
    原稿種別: 原著
    2005 年 115 巻 14 号 p. 2381-2388
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    Randomly Amplified Polymorphic DNA-Polymerase Chain Reaction(以下RAPD-PCRと略す)を用い,Propionibacterium acnesの分類を試みた.その結果,P. acnesのほとんどは4種類のDNA-type(D1,D2,D3及びD1/D3中間型)に分類でき,そのうちのD3が尋常性痤瘡病巣部から多く分離された.P. acnes D3は,他のDNA-typeと比較し,Lipase活性が高く,Coproporphyrin産生量が多かったことから,尋常性痤瘡と強く関与していると考えた.加えてRAPD-PCRは,P. acnesの分類において,有用な手法と考えた.
  • 岡島 加代子, 木村 鉄宣, 安齋 眞一
    原稿種別: 原著
    2005 年 115 巻 14 号 p. 2389-2393
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    札幌皮膚病理研究所で病理診断したBowen病164例について,腫瘍細胞の附属器上皮への進展の有無を検討した.男性53例,女性111例,病変切除時の平均年齢73.7歳の164症例中毛包61例(37.2%),エクリン汗管74例(45.1%)の総計91症例(55.5%)で毛包あるいはエクリン汗管上皮内に腫瘍細胞が存在していることを確認した.男性ではエクリン汗管で,女性では毛包に腫瘍細胞進展の出現する率が高かった.発生部位別の検討では,上肢では43.8%(毛包31.3%,エクリン汗管31.3%),躯幹では57.8%(毛包35.9%,エクリン汗管46.9%),外陰部では63.6%(毛包45.5%,エクリン汗管36.4%),そして,下肢では54.8%(毛包30.1%,エクリン汗管45.1%),の症例で付属器上皮内進展があった.上肢では比較的附属器上皮内進展が少なく,外陰部では多い傾向にあった.男女別では,女性の外陰部に多く,四肢に少ない傾向があり,男性の上肢・外陰部に少なく下肢に多い傾向があった.Bowen病では,腫瘍細胞の附属器上皮への進展は稀ではないことを認識しておくことはその診断および治療面において重要である.
  • 水野 愛, 瀧本 玲子, 松葉 祥一, 白木 祐美, 玉井 克人, 高森 建二
    原稿種別: 原著
    2005 年 115 巻 14 号 p. 2395-2399
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    40歳,男.生下時より軽微な機械的刺激によって身体各所に水疱形成と瘢痕治癒を繰り返し,優性栄養障害型表皮水疱症の診断を受けていた.平成11年秋頃より,右足背部に有痛性潰瘍が出現,急激に増大・隆起し,9×5 cm大となった.皮膚生検術にて有棘細胞癌と診断した.腫瘍切除術及び植皮術を施行し,術後経過は良好である.表皮水疱症と有棘細胞癌の合併について過去の報告例をまとめ,若干の考察を加えた.
  • 加藤 しおり, 亀井 恭子, 河崎 玲子, 小西 さわ子, 今山 修平, 小林 良三, 古江 増隆
    原稿種別: 原著
    2005 年 115 巻 14 号 p. 2401-2404
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    2001年始めから2004年9月30日までの3年9カ月間に九州医療センター(700床,33診療科,地域医療支援病院)全体で42,204人の入院があった.その内当科入院の患者は712人(1.7%)であったが,緊急に限れば,直接に当科に緊急入院となった患者,および他科に一時的に緊急入院し最終的に当科入院となった患者は合わせて144人であった.その144人の内訳は,男女比63:81でやや女性が多く,年齢は4カ月から102歳(平均年齢:46.7歳)であった.疾患ごとには帯状疱疹,カポジ水痘様発疹症などのヘルペス感染症が32%と最も多く,他のウイルス・細菌と合わせると,急性感染症が全体の50%を占めた.また病院全体の救急・緊急患者のうち皮膚症状を発現して紹介された症例については,(全3年9カ月のうち)統計処理が可能になった後半の1年9カ月について検討した.その間の緊急入院5,795人の中で135人(2.3%)が皮膚科受診していたが,疾患は急性感染症・薬疹は少なく一般入院患者と同じ慢性疾患が多く含まれており,皮膚科の緊急症例は当初から皮膚科入院となっていた.事故以外の皮膚科の救急・緊急症例は急性感染症とアレルギーが大部分であることが示された.
速報的小論文
  • 田村 暢子, 石井 則久
    原稿種別: 速報的小論文
    2005 年 115 巻 14 号 p. 2405-2407
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル 認証あり
    高齢の疥癬患者16例(平均年齢82.8歳,入院14例・外来2例)にイベルメクチン内服治療を行い,有効性と安全性を検討した.1回投与量200 μg/kgを1週間間隔で2回投与し,初回投与から3週間後に効果判定した.併用外用剤はレスタミン軟膏(頓用)のみとした.途中脱落・中止の3例を除いた13例中11例が治癒した.また,投与前後での血液生化学検査所見に異常を認めなかった.副作用は下痢1例,中毒疹1例で共に一過性で軽症であった.8例については4カ月後までに再発を認めなかった.以上よりイベルメクチン内服は高齢者においても有効性と安全性の高い治療であると考えられた.
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