ステロイド内服治療による一般的な副作用は用量依存性で投与量が5~10 mg以下で消失することが多いため,ステロイドの効果が得られた後は速やかに減量したい.しかし,急激にステロイド量を減量すると時に免疫変調によるリバウンド現象がみられることがある.その病態の一つに免疫再構築症候群があり,これは一定期間の免疫抑制状態を急に解除するために,急激に免疫が回復し再構築したタイミングで自己反応性もしくは感染細胞に対する細胞障害性T細胞による組織障害である.経過を通じて免疫状態を把握し,ウイルスの再活性化やマイコプラズマ感染症の後にはステロイド量の急速な減量を避け,感染症対策を行い症状をみながらステロイドを徐々に減量していくことが良い.
ステロイド治療は,諸刃の刃であるため一方的な判断が予期せぬ結果を招くことがあるので,常に光と影を想定しながら治療を進める必要がある.
ステロイドは,強力な臨床的効果を有する薬剤であるが,さまざまな副作用も知られており,両刃の剣でもある.ここではステロイドの全身投与法を再考し,皮膚科医として必要な7つの心得について述べた.1.ステロイドは究極の対症療法薬である.2.常用量の概念が通用しない特殊な薬剤である.3.適応と使用法には厳密なエビデンスはないがコンセンサスがあり,それに基づいた使用法が求められる.4.初期量・使用期間・減量方法を予め定めて開始する.5.免疫疾患では維持量の見極めが大切である.6.副作用の予防と対策に細心の注意を払う.7.ステロイドと抗ヒスタミン薬の合剤を漫然と処方し続けない.
膠原病のような慢性炎症性疾患のほとんどすべてにおいて副腎皮質ステロイド(ステロイド)の適応があり,ステロイドを第一選択薬とする疾患が多い.しかしステロイドは急性期の病態・症状を改善するが,疾患を治癒させるものではない.ステロイドの投与量は疾患,障害臓器,重症度などに応じて異なり,その病態を抑えうる必要かつ十分な量を用いる.活動性が高い時期にはステロイドを増量し,活動性が低下すれば漸減して維持量に近づける.ステロイドの使用に当たっては,その副作用に習熟し常に注意を払う必要がある.
強皮症腎クリーゼ(scleroderma renal crisis:SRC)の12症例を対象に前駆症状について後ろ向きに検討した.前駆症状は,全身倦怠が9例(75%),微熱が3例(25%),筋肉痛が5例(42%),頭痛が2例(17%)にみられた.検査所見では血中ヘモグロビン値低下が2例(17%),血小板数低下が5例(42%),血清クレアチニン値上昇が6例(50%)にみられた.このような前駆症状は血栓性微小血管障害様病態を伴っている症例に高頻度にみられた.
61歳男性.初診6カ月前から陰部,下腿にびらん,痂皮,紅斑が出現し,顔面や両大腿に拡大した.紅斑部の組織では表皮角化細胞に空砲化とランゲルハンス細胞の減少を認めた.血液中の総アミノ酸量と血清亜鉛の低下,血中グルカゴンの著明な上昇,腹部CTで膵尾部結節影と肝多発腫瘤影を認め,肝生検によりグルカゴノーマと診断した.点滴によるアミノ酸補正により紅斑は著明に改善した.壊死性遊走性紅斑の呼称について考察し,栄養障害による類似皮疹を統合して栄養障害性紅斑症と呼ぶことを改めて強調した.
39歳,女性.右大腿部をイトグモ(Loxosceles rufescens)に咬まれた.受傷後約6時間より局所の疼痛,発熱および全身の紅斑が出現し,受傷後約20時間で“red, white, and blue sign”がみられた.第30病日に長径約10 cmの最大潰瘍になったが,受傷後約4カ月には小潰瘍をのこして瘢痕上皮化した.イトグモは壊死性皮膚病変の原因となり,日本にも生息していることが知られている.自験例は,イトグモの確認と同定ができたイトグモ咬症(loxoscelism)の本邦第1例目である.