尋常性乾癬では,主要組織適合抗原のうち B13, B17, B37 の3抗原が高頻度に出現することが認められている.しかし,それら3抗原は本症患者の全例には出現していない.そのため,より強く疾患感受性遺伝子または免疫応答遺伝子と関連する別の抗原系が存在するのではないかと考えられている.すなわち,マウスの la 抗原 (immune region associated antigen) ,Ir 抗原 (immuneresponse gene) に匹敵するといわれるヒトのDR (Drelated) 抗原について,尋常性乾癬40例,健康正常人33例を対象にして調べ,次の結果を得た. 1.本症患者全例で陽性を示す同一 DR 抗原は認められなかったが, DRW 7 が患者群で高頻度に出現した (r.r. = 17.52, χ2=5.50, p<0.016). 2. DRW 3(2例)および DRW 7(8例)は患者群だけに認められ,健康正常人ではいずれも認められなかった. 3.特定B抗原(B13, B17, B37)をもっ患者群と,それらをもたない患者群間の DR 抗原出現頻度に統計学的有意差はなかった.しかし,特定 B 抗原をもつ患者群では,健康正常人群に比べて DRW 7 が高頻度に出現した(r.r. = 26.39, χ2=7.51, p<0.0069). 4.尋常性乾癖では, B13-DRW 7 の連鎖不平衡が成立した (H.F.=0.0633, Δ=0.0536, t=2.3304). B37-DRW6では,連鎖不平衡は成立しなかったが, haplotypefrequencyが高値を示した(H.F. = 0.0410).その結果,本症では A1-B37-DRW 6 および B13-DRW 7 の2つの haplotype が認められた.以上の結果から,本症において主要組織適合抗原と強くリンクする疾患感受性遺伝子または免疫応答遺伝子が存在すると考えられた.また,それらと本症発症との関連について種々考按した.
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