血液と周囲組織との物質交換が,毛細血管を介して行なわれていることは周知のことであり,この場合,毛細血管内の物質は動脈側より組織内に出,組織内の物質は静脈側の毛細血管から吸収されるということも,血管と組織との物質交換についての通説である.また,物質の種類により,如何なる部分の小血管から組織内に出るのか,さらに,この場合,物質が小血管の内皮細胞の如何なる部分を通つて出るのか,すなわち,細胞間隙を通つて出るのか,または,内皮細胞自身を横断して運ばれるのかについても,種々の見解が発表されている.さらに,病的状態における小血管の透過性についても,種々の研究が行なわれており,1873年Cohnheimは急性炎症は血管の透過性の亢進を伴なうものであることを指摘したが,やがてhistamineが発見され,その血管透過性に対する作用が究明されるにつれ,Cohnheimの説がうけ入れられるようになつてきた.その後,Rich,Lewisは障害された組織から遊離されたhistamine,あるいはhistamine類似物質が血管壁に作用して,異常な透過性を惹起することを認め,病的状態における,あるいはhistamineなどの血管透過促進物質を用いた場合の,透過性についての研究が行なわれ,種々の説が提出されている.著者はラッテの挙睾筋,腸間膜について,正常細小血管の超微細構造を追求するとともに,追跡物質として白金および鉄コロイドを用い,その漏出血管の種類,および血管壁のいずれの部位から漏出するかを,血管透過促進物質を用いた場合と,然らざる場合の両者について,光学顕微鏡的,電子顕微鏡的に追跡したので,その成績について報告する.
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