ダニ媒介性感染症のうち,マダニが媒介する日本紅斑熱,重症熱性血小板減少症候群,ダニ媒介性脳炎,ライム病,そしてツツガムシが媒介するつつが虫病について,疾患の概要と診断のポイントなどを述べた.これらは四類感染症に指定されており,適切な診断と対応を要する重要な疾患である.皮膚科医が初期対応をする機会が多く,正確な知識と判断が要求される.
グローバル化,温暖化に伴い日本でも蚊媒介感染症の流行が危惧される.蚊媒介感染症はマラリアとリンパ浮腫以外はほとんどがウイルス性であり,他の発熱性疾患との鑑別が難しい場合も多いが,症状の出現時期や随伴症状などにそれぞれの特徴がある.風疹,麻疹,EBウイルス感染症,急性HIV感染症などの感染症だけでなく重症薬疹も鑑別すべき疾患としてあげられる.綿密な病歴聴取,流行している感染症の把握が必要である.また4類感染症に指定されている蚊媒介感染症は,疑った場合速やかに保健所に届け出る.
アタマジラミは,市販されているピレスロイド製剤を用いて家庭内で駆虫してきたため,これまで皮膚科医が介入する機会はほとんどなかった.しかし近年,ピレスロイド製剤で駆虫できない難治性アタマジラミ症が世界中で広がり,日本でも遭遇する機会が増えている.アタマジラミの特徴,治療法,感染対策について解説するとともに,ピレスロイド抵抗性アタマジラミの耐性化機序や日本の現状と,今後期待される薬剤について紹介する.
66歳女性.関節リウマチでメソトレキセート,プレドニゾロン,アバタセプトで加療中右下腿の結節を自覚し,同部の疼痛が出現した.その後,結節の中央が潰瘍化し,近傍に水疱が出現した.病理学的に結節部は肉芽腫性血管炎を認め, 水疱部はウイルス性の水疱であった.MTXとアバタセプトの中止で皮疹は改善した.両病変共に免疫染色でVZVが陽性,PCRにてVZVのDNAが検出されVZVによる肉芽腫性血管炎と診断した.免疫抑制患者に生じた肉芽腫性血管炎をみた際,VZV感染も念頭におく必要があると考えた.
両親はインド人で従妹婚.第2児と第4児にそれぞれ日齢3日と日齢1日から全身に水疱とびらんが出現.病理検査で表皮下に水疱を認め,免疫染色でlaminin332が完全消失し,重症汎発性接合部型表皮水疱症と診断した.外用処置や抗生剤を投与したが,両児ともにそれぞれ生後1年3カ月と1年1カ月で死亡した.遺伝子検査では両児ともLAMB3遺伝子のp.Arg569*変異のホモ接合体であった.本変異はこれまで米国,インド,イギリスから報告がある.日本では本症の報告はこれまで15例あるが,本変異の報告はなかった.