乳房外Paget病62例(66病巣)について臨床的事項および病理学的所見を検討した.初診時病巣内に硬い腫瘤を触れたものは19例(30%)であった.予後追求できた50例のうち本症の全身転移による死亡は10例に及んだ.また多臓器癌を併発した症例は5例であった.U.I.C.C.に準じたTNM分類試案により経過および予後をみると,有棘細胞癌の成績に酷似した.組織学的には表在性50%面皰癌24.2%浸潤癌25.8%であった.硬く触れた腫瘤の組織像はすべて浸潤癌あるいは面皰癌の像を呈した.腫瘤を触れなかった症例でも34%に浸潤癌あるいは面皰癌の組織像を示した.浸潤癌の初期像を表皮内病巣由来(I型)と面皰癌由来(II型)に分類した.また浸潤癌は組織構築上,腺癌あるいは単純癌の像を呈した.浸潤癌の組織化学および電顕所見は表在性乳房外Paget病と根本的な差異はみられなかった.以上により乳房外Paget病は初期には表皮内あるいは汗管内でcarcinoma in situ の状態にあり,進行とともに表皮内では増殖型,汗管では面皰癌の像を呈し,さらに進行すると浸潤癌の像を呈するようになり,リンパ節あるいは全身に転移を来たすようになると考えた.著者は乳房外Paget病を漠然と癌前駆症とするよりは癌(Paget癌)としてとり扱うことを妥当と考えた.
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