悪性黒色腫の術後経過観察について,欧米と比較すると,日本ではCTやMRIを用いた検索が積極的に行われている.術後経過観察における画像検査の臨床的有用性をStage I~IIIの悪性黒色腫患者142名を対象にレトロフペクティブに検証した.3カ月毎の診察に加え,6~12カ月毎にCTスキャン,MRI,Ga,Tcシンチグラフィー,PETのいずれかによる画像検査を行ったところ,経過観察期間(1カ月~185カ月,中央値61.4カ月)に44例(31%)に転移が発見された.そのうち28例は自覚症状あるいは診察によって発見されたが,16例は画像検査により発見された.転移発見時に血清腫瘍マーカー(5-S-CD,MIA,LDH)が異常値を示したのはそれぞれ24%,72%,12%であった.転移が画像で発見された群(16例)と診察で発見された群(28例)の初回手術からの生存期間の間に有意差はみられなかったが(
p=0.27),転移巣の切除が可能だった群(n=29)の方が切除の不可能だった群(n=15)より有意に長かった(
p=0.001).一方,遠隔転移が切除可能だった群と不可能だった群の比較では切除可能だった群の方が長い傾向がみられた(
p=0.07).これらの結果から手術可能な状態で転移を発見することの意義と画像検査が無症候の遠隔転移の発見に有用であることが示唆されたが,全ての患者に頻回の画像検査を行うことは困難であり,より鋭敏な画像検査や腫瘍マーカーによる経過観察法の検討が必要である.
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