膿疱性乾癬(汎発型)は希少疾患であり,厚生労働省の指定する指定難病である.日本皮膚科学会が発表した「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2010:TNFα阻害薬を組み入れた治療指針」の改訂が行われ,改訂版ガイドラインが「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版」として2015年に刊行された.改訂の主なポイントは,病因におけるIL36RN遺伝子変異に関する記載の追加,疫学データの更新,TNFα阻害薬以外の新規生物学的製剤に関する記載の追加,新規治療法として顆粒球単球吸着除去療法の追加,妊婦/授乳婦および小児の治療についての解説の更新である.本セミナリウムでは,改訂版ガイドラインの概要を改訂部分を中心に解説する.
最近,筆者らは自然免疫に関与する1つの遺伝子の変異が病因で炎症性角化症をひきおこす疾患群「自己炎症性角化症」を提唱した.膿胞性乾癬(汎発型)はしばしばこの自己炎症性角化症に含まれる.病因遺伝子はIL36RN遺伝子あるいはCARD14遺伝子である.IL36RN遺伝子変異により遺伝子産物のIL-36受容体拮抗因子(IL-36Ra)機能欠損を引き起こす.IL-36Ra欠損症の膿疱形成のメカニズムは以下のとおりである.最初にTLR-4リガンド,TNF-α,IL-1β,IL-17A等によりIL-36α,IL-36β,IL-36γの前駆体が誘導される.第二にIL-36α,IL-36β,IL-36γの前駆体が好中球由来のプロテアーゼでN末端が切断されて活性化する.第三にIL-36Raが機能欠損しているので,IL-36受容体以下のシグナルが持続して活性化される.最後にCXCL1やIL-8などの好中球を遊走させるケモカインが放出され,膿疱を形成されると考えられる.
メトトレキサート(MTX)は,関節リウマチ(RA)治療のアンカードラッグとして評価されているだけでなく,欧米では乾癬に対する標準治療薬に位置づけられている.本邦では,MTXの乾癬に対する適応は認められていなかったが,2018年11月,厚生労働省「医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議」において医療上の必要性が高いと判断され,公知申請の結果,2019年3月に薬事承認された.本稿では,患者の一層の安全確保を目的として,乾癬治療薬としてのMTXの国内使用実態と,RAにおいて実践されており今後乾癬にも適用できると考えられる安全対策について概説する.
当科で経験した9例の好酸球性筋膜炎について後ろ向きに調査をした.8例が女性,全例で初発症状は下腿浮腫であった.1例は1年以上の経過で受診したが,既に広範囲に皮膚硬化を呈しステロイド抵抗性であった.発症から短期間での受診例は,浮腫性硬化程度の症状にとどまり,ステロイド治療で治癒し持続性の皮膚硬化には至らなかった.硬化や拘縮などの後遺症の予防として早期の診断とステロイド導入が重要であると考えた.治療前にTARCを測定した例では全例で高値であり,治療前後での変動が大きく病勢の指標として有用であった.