アトピー性皮膚炎に属するものを除き,所謂真正小児湿疹,或は小児の通常湿疹に於てその皮膚病変の発生,展開に直接関与するものとしての皮膚素因に如何なるものがあるかを知る可く,乳幼児から思春期に至る各年令区分に於ける小児湿疹の症例に,同じ年令区分に於ける健常小児を対照として,各種皮膚反応を実施してその成績を求めた.これに拠れば,これ等諸反応は多くは湿疹児,健常児の何れにあつても逐令的に増強し,或は減弱するが,湿疹児では健常児との比較に於てQ.R.Z.は短縮し,血管収縮反応は減弱,淋巴滲出反応は増強,メチレン青斑の消失時間は短縮し,トリパン青斑拡散試験のトリパン青斑の拡大度亦健常児を凌駕し,皮膚毛細血管抵抗は健常児に劣る.このことから小児湿疹ではその健常皮膚が健常小児に比し浮腫傾向にあり,血管反応性に乏しく,淋巴滲出性に富み,更に皮膚還元能に於て,又皮膚組織透過性並に血管透過性に於て健常小児を凌駕することが窺われる.それは小児湿疹のみに限らず一般に湿疹皮膚病変の発生,展開に直接関与する皮膚素因として意義を持つと考えられるが,諸皮膚反応の逐令的消長を湿疹児,健常児に於て検討し,又両群間で比較すると,Q.R.Z.が年少者程低値を示すこと,又淋巴滲出反応は健常児との比較で特に1才未満の患児に於てより強く,毛細管抵抗亦同じ比較に於て特に1才未満に於てより低い事実は皮膚浮腫傾向,淋巴滲出性,血管透過性が特に乳幼児湿疹の皮膚素因として大きい意義を有することを思わしめる.
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