強皮症患者血清中の抗トポイソメラーゼⅠ抗体(以下,抗トポⅠ抗体)および,抗セントロメア抗体(以下,抗セ抗体)の免疫グロブリンクラスをリコンビナント蛋白を用いたELISA法で解析し,従来の二重免疫拡散法,間接蛍光抗体法との間の一致率を比較し,さらに臨床症状との関連性について検討した.二重免疫拡散法で抗トポⅠ抗体陽性血清10検体のクラス別出現頻度はIgGクラス100%,IgAクラス70%,IgMクラス30%であった.これに対し,二重免疫拡散法で抗トポⅠ抗体陰性血清57検体では3検体が陽性を示した.一方,抗セ抗体に関してはHEp-2細胞を基質とした間接蛍光抗体法で陽性と確認された22検体のクラス別抗体出現頻度はIgGクラス100%,IgAクラス45%,IgMクラス41%であった.これに対し,間接蛍光抗体法で抗セ抗体陰性血清42検体では10検体が陽性を示した.抗体クラスと臨床症状との関連性については,抗トポⅠ抗体では検討した項目との間に関連性は無かったが,抗セ抗体では複数のクラスの抗体が共存する症例はIgGクラス単独症例に比べ,有意に食道蠕動能低下の頻度が高かった.ELISA法は従来の抗トポⅠ抗体や抗セ抗体の検出法に比べ感度は同等ないしそれ以上であり,抗体を免疫グロブリンクラス別に迅速かつ簡便に検出できる点で優れた方法と考えられた.しかし,特異性に関しては若干の問題が残されており,最終判定にあたっては,臨床所見を勘案しながら間接蛍光抗体法の染色パターンやイムノプロット法などで確認する必要があると考えられた.
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