脂漏性角化症,基底細胞上皮種,Bowen病,日光角化症に続発した限局性皮膚アミロイドーシスを臨床的,組織学的,免疫組織化学的,電顕的に検討した.アミロイド沈着は,これら4腫瘍339例中165例に認められ,各腫瘍における陽性率は,脂漏性角化症-29.9%,基底細胞上皮種-70.3%,Bowen病-52.6%,日光角化症-53.5%で,悪性ないしは前癌性腫瘍に,より高頻度であった.患者の年齢,性差,罹病期間,発生部位(露光部か否か),腫瘍の大きさとアミロイド沈着との関係を検討した.年齢では脂漏性角化症と日光角化症のアミロイド陽性群が有意に高齢で,性差では日光角化症で有意に女性の陽性率が高かった.また,罹病期間は陽性群と陰性群との間に有意差をみなかったが,部位との関係では脂漏性角化症において非露光部に有意に陽性率が高く,また脂漏性角化症とBowen病では陽性群が有意に腫瘍面積が大であった.組織学的にはアミロイド沈着は腫瘍近傍の間質に多く,小型類円形で集簇し,稀に腫瘍と離れた真皮や毛包周囲にも認められたが,血管壁にはみられなかった.脂漏性角化症と基底細胞上皮種ではその組織型によってアミロイドの沈着の頻度,程度に差があり,脂漏性角化症のadenoid type,基底細胞上皮種のadenoid,cystic,plexiform typeでは特に高頻度かつ多量に沈着が認められ,腫瘍細胞と間質の接触面積が大きいものほどアミロイド沈着の頻度,程度が高度となる傾向を示した.免疫組織化学的検索ではこれらのアミロイドはAmyloid P-component陽性で,Amyloid A-component陰性,Light chain陰性であった.さらにポリクロナール抗ケラチン抗体染色ではアミロイドに陽性所見を示すものが多く,モノクロナール抗ケラチン抗体ではKL-1(56KD)やCAT30903(56,56.5,58KD)で陽性例が存在したが,CAT30904(68KD)はすべて陰性であった.これらの結果から皮膚腫瘍に続発する皮膚アミロイドーシスの発生機序は,腫瘍組織の基底細胞から比較的低分子量のケラチンがアミロイド前駆蛋白として間質に放出され,その場でアミロイドが形成されると考えられた.
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