慢性蕁麻疹は膨疹が自発的に出現する状態が6週間以上継続する状態を指す1).近年,疾患特異的な尺度以外に患者自身の主観的な評価が重要視されてきており,これを患者報告型アウトカムと呼ぶ.本稿では慢性蕁麻疹に用いる3種類の患者報告アウトカム尺度を紹介し,日常診療における活用方法について概説する.さらに慢性蕁麻疹の病態や治療に関する最近の知見について述べる.
刺激誘発型の蕁麻疹の症状を完全に抑制することはしばしば困難であるが,病型に応じた対処により症状を十分に軽減することは可能である.そのためには,出没する膨疹の形態や経過を観察し,疑われる誘因に関する誘発試験を行うことで,誘因を同定(病型を診断)する必要がある.正確な病型診断により,個々の患者の(時に複数ある)病型に適した治療を行い,誘因に対する対処法を指導することができる.
血管性浮腫は,原則,蕁麻疹を合併しないブラジキニン起因性と,蕁麻疹を合併しやすいマスト細胞メディエーター起因性に大別される.前者の代表例,遺伝性血管性浮腫は,喉頭や消化管などの粘膜の浮腫が単独で現れることもあり致死的になる.近年,その新規治療薬として急性発作時のB2受容体拮抗薬,長期予防のブラジキニン阻害薬や抗ヒト血漿カリクレイン抗体,C1-インヒビター阻害薬などが登場し,より安全な管理が可能になった.
足部の運動機能障害や足趾変形が足趾巻き爪の発生要因であるという仮説に基づき自立歩行可能な成人130名を対象に検証を行った.対象者の足趾に認めた巻き爪を発生部位と形状により分類し,足趾間力および足関節可動域,外反母趾,第2-4趾変形との相関性を解析した.母趾および第2-5趾巻き爪は足関節背屈可動域低下と,第2-5趾巻き爪は第2-4趾変形と有意な関連が認められた.形状分類では,母趾Trumpet型巻き爪と足趾間力低下,母趾Plicated型巻き爪と中程度以上の外反母趾,第2-4趾変形が関連していた.
50歳,女性.初診の約2年前より,手足全ての爪の表面に凹凸がみられ,爪の根元の皮膚には強いかゆみが生じるようになった.当科初診時,指趾全ての爪甲に縦走する細かい線条(爪甲縦条)と縦溝を多数認め,爪甲表面は著しく粗造化し,光沢が消失していた.また,近位爪郭の皮膚には発赤と腫脹がみられ,強い瘙痒を伴っていた.爪母から生検を施行し,組織学的に爪母上皮の海綿状態を認め,特徴的な爪症状と合わせて特発性トラキオニキアと診断した.本邦ではあまり認知されていないトラキオニキアの疾患概念について紹介し,診断から治療の考え方について述べる.