日本皮膚科学会雑誌
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104 巻, 14 号
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  • 浅井 寿子, 和田 知益, 米元 康蔵, 衛藤 光, 西山 茂夫
    1994 年 104 巻 14 号 p. 1715-
    発行日: 1994年
    公開日: 2014/08/12
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    細胞増殖や細胞周期は多数の因子により制御され,その障害は細胞の腫瘍化に深く関与している.悪性黒色腫における遺伝子変異を明らかにする目的で,細胞増殖・周期に関わる遺伝子群の解析を行った.悪性黒色腫細胞株5株とエックリン汗器官癌由来細胞株(K-ECC)1株を検索対象とし,PCR(polymerase chain reaction)によりN-,K-,H-ras,p53,MDM2ならびにMTS1/CDK4Ⅰ遺伝子の変異を検索した.K-ECCではK-ras,p53の変異とMTS1/CDK4Ⅰの欠失がみられ,多遺伝子の変異が検出された.悪性黒色腫細胞株ではras,p53およびMDM2の異常は1例も認められず,MTS1/CDK4Ⅰ遺伝子の欠失と点突然変異を伴う不活性化が全5株にみられた.悪性黒色腫細胞株において細胞周期の負の抑制因子であるMTS1/CDK4Ⅰ遺伝子の不活性化が高頻度に検出されたことは,細胞周期制御機構の破綻が悪性黒色腫細胞の増殖・腫瘍化に関与していることをし示唆している.
  • 秋山 尚範, 鳥越 利加子, 森下 佳子, 神埼 寛子, 多田 讓治, 荒田 次郎
    1994 年 104 巻 14 号 p. 1721-
    発行日: 1994年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    dv・dv腫症,伝染性膿痂疹,アトピー性皮膚炎より分離したStaphylococcus aureus各5株のglycocalyx産生性および熱傷部皮膚へのS. aureusの接着を観察することによりS. aureusのglycocalyx産生性とその対策について検討した.1)マウスの絹糸縫合部皮膚にS. aureusを塗布・密閉する方法でdv・dv腫性,伝染性膿痂疹,アトピー性皮膚炎より分離したS. aureus各5株すべてで著明なfibril様構造(glycocalyx像)の産生を認めた.S. aureusは接着の初期に好中球などによる貪食から逃れた場合,普遍にglycocalyxお産生し,biofilmを形成しうる可能性が考えられた.2)マウスの背部に100℃の分銅を10秒間圧抵して作製した熱傷部ではS. aureusは菌接種3時間後よりfibril様構造(glycocalyx像)を産生し,多糖体を含む膜様構造物(biofilm像)内に認められた.一方,マウスの背部に60℃,80℃の分銅を3秒間圧抵して作製した熱傷部ではS. aureusは菌接種1時間後よりfibril様構造を産生した.In vitroの観察で,熱傷皮膚+滅菌生理的食塩水中ではS. aureusは菌接種3時間後よりfibril様構造を産生した.熱傷皮膚片+マウス血清中ではS. aureusは菌接種1時間後からより多量のfibril様構造を産生した.S. aureush生体成分の存在なしにglycocalyxを産生しうるが,S. aureusの接着早期のglycocalyx産生および多量のglycocalyx産生には生体成分の存在が必要であると考えられた.熱傷部皮膚表面に形成されたbiofilmへの対策としてトリプシン製剤の湿布が有用である可能性が考えられた.
  • 豊福 一朋, 中山 樹一郎, 堀 嘉昭
    1994 年 104 巻 14 号 p. 1729-
    発行日: 1994年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    マウスB16メラノーマに対しマウスrecombinant β-interferon(rIFN-β)局注と局所microwave温熱の併用療法を施行し,腫瘍の著明な退縮効果を観察した.その機序を検討する目的で,マウスB16メラノーマにrIFN-β局注あるいは局所温熱の各単独療法,および両者の併用療法を施行した場合のメラノーマに浸潤する免疫細胞の同定および分布の観察を行った.その結果,rIFN-β局注療法単独では無治療の腫瘍に比べ,腫瘍巣,腫瘍周囲の間質にT細胞,macrophageが稠密に浸潤しているのが認められた.局所温熱療法単独では,NK細胞,macrophageが稠密に浸潤しているのが認められた.rIFN-β局注と局所温熱療法併用療法では上述の単独療法に比べて,強い抗腫瘍効果が観察され,浸潤細胞では,T細胞macrophageの著明な細胞浸潤を認めたが,NK細胞は全く認められなかった.この現象の説明は現時点では詳細は不明であるが,本療法によるメラノーマ細胞における接着分子の発現に何らかのmodulationが引き起こされている可能性が考えられた.この動物実験の結果をもとに,再発性あるいは転移性の悪性黒色腫2例にヒト線維芽細胞由来IFN-β局注療法とmicrowave局所温熱療法の併用療法を行った.その結果,本療法の治療効果に原発性と転移性で大きな差異がみられ,前者では有効,後者では無効であった.これら2例の悪性黒色腫の治療前病理組織像が,原発巣では表皮内に異型細胞の胞巣を認め,真皮に強い反応性細胞浸潤がみられたのに対し,転移例では真皮内の転移病巣に対する細胞浸潤が全くみられなかった.これらのことより,本治療に対する悪性黒色腫の反応の違いは,有効例では,あらかじめ腫瘍巣に存在していた浸潤細胞が免疫療法により活性化され,メラノーマを退縮させた可能性があり,腫瘍巣に対する反応細胞浸潤の有無がrIFN-β,温熱療法の有効性と関係している可能性が示唆された.以上の臨床及び基礎的検討結果より,ヒトIFN-β局注療法と局所温熱療法の併用療法は,腫瘍巣に対する生体の免疫反応(反応性細胞浸潤)が認められる悪性黒色腫に有効と考えられ,浸潤細胞の無い転移巣では浸潤細胞を,何らかの手段で,誘導し,その後に本療法を施行する方式の検討が必要と思われた.
  • 石野 章博, 辻 善春, 宇塚 誠, 仲西 城太郎, 安達 健二, 半澤 範朗, 岡崎 邦宣, 今村 貞夫
    1994 年 104 巻 14 号 p. 1737-
    発行日: 1994年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    男性型脱毛の定量的評価を目的として,男性型脱毛の男性64名の頭部4ヵ所を対象に成長毛率および毛髪径の測定を行った.成長毛率は,phototrichogramにより測定し,毛髪径は新たに開発した画像処理を応用した毛髪径測定システムを用い計測した.観察開始時の成長毛率は,左右に有意な差を認めなかったが,前頭部と頭頂部の間には有意な差が認められた.1年間の変動については,頭頂部のみ1.26%の有意な減少が認められた.毛髪径は,測定開始時の各部位間および左右間に有意な差を認めなかった.10ヵ月後の毛髪径は,各部位とも有意な減少を示し,4部位平均では1.2μmの減少を示した.測定開始時の毛髪径分布は,なだらかな2峰性の分布を示し,10ヵ月間で60μmを境に太い毛髪は減少し細い毛髪は増加するという分布形態上の変化が観察された.この分布に対し成長毛率をもとに層別化を行った結果,成長毛率の低下に伴い,毛髪径の分布の山が細い方へとシフトする変化が観察された.これらの毛髪径分布の形態を表す指標として毛髪径がxμm以上を示す毛髪の全毛髪に占める割合(分布パターン解析指標,Distribution Pattern Index: DPIx)を考案した.DPI60を指標として毛髪径分布の変化について解析した参果,DPI60は10ヵ月間で約2.9%の有意な減少を示した.毛髪径分布についても,成長毛率および毛髪径同様左右の部位間に差は認められなかった.以上の結果より,本法は,男性型脱毛の状態や進行を定量的に測定し,評価するための優れた方法であるとともに,薬剤をハーフヘッド法で評価するための有効な手段であると考えた.
  • 高橋 さなみ, 小松 平, 毛利 忍, 加藤 安彦, 中村 宣生
    1994 年 104 巻 14 号 p. 1747-
    発行日: 1994年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    53歳の男性,1987年結節性多発動脈炎(以下PN)と診断され,最近はPSL約10㎎/日でほぼ寛解状態であったが,1993年6月,突然右足部の疼痛と冷感を自覚,保存的治療に反応せず切断に至った.切断肢を病理的に検討,前脛骨動脈は起始部より内腔が閉塞し周囲と線維性に癒着していた.腓骨動脈は下腿ほぼ中央部で分節状に内腔が閉塞しその抹消も狭窄していた.後脛骨動脈は下腿中央部で内腔が狭窄し,それより抹消部に動脈瘤がありその前後7cmにわたって赤色血栓で完全閉塞していた.組織学的には内膜の肥厚,内弾性板の破壊,中膜・外膜の強い線維化等,瘢痕期の全層性動脈炎の所見が認められた.本症例の閉塞部位はBuerger病の好発部位であるが,組織学的所見を勘案してPN単独による変化と考えた.
  • 兼古 理恵, 前田 和男, 杉山 貞夫, 浜田 久雄
    1994 年 104 巻 14 号 p. 1755-
    発行日: 1994年
    公開日: 2014/08/12
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    症例は56歳,女性.初診の約5年前より両手背に直径1~3㎜程の皮膚色の丘疹が出現し,徐々に増多した.病理組織学的に丘疹は線維芽細胞の増殖,膠原線維の変性,膠原線維間の開大,走行の乱れ,断裂を特徴とし,同部位はアルシャンブルー陽性であり著明なムチンの沈着を認めた.甲状腺機能異常,paraproteinemiaなどの合併症は認められなかった.臨床的・組織学的特徴より皮膚ムチン沈着症の新しい疾患概念であるAcral Persistent Papular Mucinosisと診断した.
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