平成18年1月から平成20年12月までの3年間に,当科を受診した下腿潰瘍の中で,静脈性の下腿潰瘍と診断した30例を解析した.初診時の年齢は32~90歳で平均62.4歳であった.また,女性11例,男性19例と,男性が多かった.皮膚潰瘍の経過中にDダイマーの上昇が確認されたのは測定した27例中21例であり,深部静脈血栓症を合併していたのは2例であった.また30例中,10例において静脈抜去や不全交通枝結紮などの静脈瘤に対する外科的治療を実施した.肥満,立ち仕事,骨関節疾患を下腿潰瘍の危険因子とした場合,解析症例30例中,立ち仕事は5例,BMI 25以上の肥満は14例,骨関節疾患の合併は6例にみられた.また21例にいずれか1つ以上の危険因子が存在した.危険因子を1つも伴わないのは9例であり,その内8例は潰瘍の総面積が4 cm
2未満であり,7例は潰瘍が左右いずれか片側のみと軽症であった.骨関節疾患の合併6例中5例では潰瘍の総面積が36 cm
2以上と大きく,また4例の転帰が軽快,不変に止まっていた.骨関節疾患の合併例では下腿のポンプ作用不全がおこり,静脈性下腿潰瘍の重症化,難治化を起こすので,特に注意が必要である.
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